コロナ禍の衛生意識の高まりやオフィスの働き方の変化によって、伸びているものがある。それが、ペダル式のゴミ箱だ。アスクルの商品開発の裏側に迫る本連載で今回取り上げるのは、エッセンシャルワーカーを中心とした現場ニーズをくんで投入した小型ゴミ箱だ。想定を上回る好調な滑り出しを見せている商品の企画から商品化まで迫った。

2021年2月に発売されたアスクルのオリジナル商品、小容量のペダル式ゴミ箱「ペダルペール 22L ニーナカラー」は、想定を上回る売れ行きを見せる。ピンク、ブルー、グリーン、グレーの4色で展開。分別用シール6種付き。22リットルタイプは979円(税込み)
2021年2月に発売されたアスクルのオリジナル商品、小容量のペダル式ゴミ箱「ペダルペール 22L ニーナカラー」は、想定を上回る売れ行きを見せる。ピンク、ブルー、グリーン、グレーの4色で展開。分別用シール6種付き。22リットルタイプは979円(税込み)

 「コロナ禍で在宅ワークが増えたことから、オフィス用品の需要にも変化が見られる」。こう話すのは、アスクル家具商品事業部の山下愛加氏だ。

 低調な商品がある一方で、好調に推移している商品もある。2021年2月にコロナ禍の顧客ニーズに応える形で発売されたアスクルのオリジナル商品、小容量のペダル式のゴミ箱がその一例だ。

 20年3月以降、新型コロナウイルス感染症対策による衛生意識の高まりから、アスクルのゴミ箱は2桁成長をする月が目立ってきていた。詳しく調べると、非接触でゴミが捨てられるペダル式のゴミ箱の売り上げは前年比で約3倍と急伸長。また、容量にも変化の兆しがあり、小容量タイプが売り上げを伸ばしていた。加えて、色分別ができるゴミ箱も全体の23%を占めるなど、人気になっていた。

コロナ禍でペダルを踏むことで蓋に触れずに開けられるゴミ箱のニーズが高まった
コロナ禍でペダルを踏むことで蓋に触れずに開けられるゴミ箱のニーズが高まった
アスクルでのゴミ箱の販売動向(前年同月比)
アスクルでのゴミ箱の販売動向(前年同月比) 20年3月度以降、ゴミ箱の伸長率は高めの推移。19年11 月度~20年10 月度のデータより
20年3月度以降、ゴミ箱の伸長率は高めの推移。19年11 月度~20年10 月度のデータより

 そこで、「ユーザーが求める、ペダル式・小容量・色分別という3つのポイントを備えたゴミ箱を開発することで、コロナ禍でもエッセンシャルワーカーを中心に支持を一層集められるのではないかという仮説を立てた」(山下氏)。

高い衛生意識から非接触のゴミ箱のニーズが急増

 仮説を検証するに当たり、それぞれの視点でユーザーからの支持を得られるかを詳しく調べることにした。

 まず、1つ目のポイントである“ペダル式”のゴミ箱の需要について。調べてみると、ある教育現場でのガイドラインで、感染予防のために廊下などに専用のゴミ箱を設置するといった工夫を行うこと、特にペダル式ゴミ箱が推奨されていることが分かった。

 次にペダル式の業種別の販売実績を見ると、医療機関や介護福祉、教育といったエッセンシャルワーカー関連が上位を占め、いずれも高い伸長率を記録していた。加えて、ゴミ箱全体の売り上げは前年比83%と不調だった製造業でも、ペダル式は149%と伸びていることも判明。「エッセンシャルワーカーだけでなく、他業界を含めてペダル式のニーズが高まっていると判断できた」(山下氏)。

アスクルでのペダル式ゴミ箱の業種別販売動向
アスクルでのペダル式ゴミ箱の業種別販売動向 ペダル式は前年比で好調に推移。特に「医療・薬局」「介護・福祉」「教育」といったエッセンシャルワーカーで伸長。20年8 月度~20年10月度のデータより
ペダル式は前年比で好調に推移。特に「医療・薬局」「介護・福祉」「教育」といったエッセンシャルワーカーで伸長。20年8 月度~20年10月度のデータより

 続いて2つ目のポイントである「小容量」のゴミ箱のニーズについて知るため、20年10月にユーザーへのアンケートを実施。このアンケートからゴミ箱を購入する際の選択材料として、容量が最も重視されていることが分かった。ペダル式ゴミ箱でみると、オフィスのゴミ箱の定番である45Lに続き、20Lという小容量タイプが22%と高い割合を占める結果に。そこで容量別の売り上げ実績を確認すると、驚きの数字が出た。大小さまざまな容量のゴミ箱がある中で、何と15Lが前年比257%、22Lが234%と、小容量の伸長率が大きいことが分かったのだ。

ペダル式ゴミ箱の容量別使用率(アンケートより)
ペダル式ゴミ箱の容量別使用率(アンケートより) ペダルペールを選択した人の中で、「あなたのお勤め先でゴミ箱を購入する場合、どの容量のものを購入していますか?」という問いに対してのアンケート結果(募集期間は20年10月23日から10月30日、n=816)
ペダルペールを選択した人の中で、「あなたのお勤め先でゴミ箱を購入する場合、どの容量のものを購入していますか?」という問いに対してのアンケート結果(募集期間は20年10月23日から10月30日、n=816)
ペダル式ゴミ箱の容量別売り上げ
ペダル式ゴミ箱の容量別売り上げ 昨年同期間比で小容量タイプの伸びが著しいことが判明。19年11月度~20年10月度のデータより
前年同期比で小容量タイプの伸びが著しいことが判明。19年11月度~20年10月度のデータより

オフィス縮小でゴミ箱需要が激減? 一方で商機も

 また、東京にオフィスを持つ企業経営者に向けたアンケートなどで、オフィスの縮小を予定するケースが目立っていたことも後押しになった。さらに、東京23区では、事業所が排出したゴミの量が減っているという情報もあり、オフィス縮小の影響がゴミの量に直結している可能性が見えてきた。

 「オフィスの縮小によって、アスクルでもゴミ箱全体(ペダル式や手で開けるものなど全てのタイプを含む)で見ると、大容量タイプの売り上げが減少している。だが、小容量のニーズに応えることで商機にもなる。今後はゴミの減量に対応したゴミ箱が求められるだろうと想定し、既存のペダル式ゴミ箱の45Lタイプに加え、22Lのタイプを充実させるのが重要だと考えた」と山下氏は話す。

 そして3つ目のポイントである「色分別」のニーズは、再びアンケートで深掘りした。オフィスのゴミ分別用法を聞いたところ、「2分別」「2~3分別」「4分別」というように、分別しているオフィスが60%以上に上った。分別しているという回答者に、分別・識別方法を尋ねると、「蓋の色を変えている」が約20%、「ゴミ箱にシールや文字を書いて識別している」が約50%という結果に。このことから、ゴミ箱の識別方法として、色分別、識別シールのニーズが高いことが分かった。

 「売り上げ実績から見ても、既存の4色展開のゴミ箱のカラー構成はほぼ等しく売れていることや、『色分別できて助かっている』『複数色買って分別している』といったユーザーの声などからも、複数色の展開が求められているという結論に至った」(山下氏)。こうした検証を踏まえ、衛生面を考慮したペダル式で、小容量、色分別タイプのゴミ箱を展開することを目指した。

カタログでの見せ方にも一工夫

 販売に際しては、カタログ掲載も従来とは異なる手法を取った。非接触でゴミを捨てられる衛生的な商品であることをより効果的に伝えるためだ。従来は、オリジナル商品か否かで分け、シリーズごとに商品を掲載していた。だが、21年からは形状ごとの掲載に変更。ペダル式ゴミ箱のページを見開きで設け、その中の目玉の1つとして本商品を大きく掲載した。用途ごとに選べるようにしたのだ。

新商品発売前のカタログ
新商品発売前のカタログ
今回の新商品、ペダルペール ニーナカラー発売後のカタログ。ペダル式のゴミ箱を見開きでまとめて見られるように変更した
今回の新商品、ペダルペール ニーナカラー発売後のカタログ。ペダル式のゴミ箱を見開きでまとめて見られるように変更した

 カタログの効果などもあり、販売スタートから2カ月後には発売当初の2倍の売り上げを達成。ユーザーからも色分別に対応したことや、価格面や衛生面なども「満足度が高い」という声が届いている。購入顧客の業種別構成比も、医療機関や薬局、介護福祉、教育といったエッセンシャルワーカー関連の割合が大きく占めており、当初想定していた通りのターゲットに響いた。時流を的確に捉え、「さまざまな角度からの調査を商品開発に生かしたことが成功に結びついた」と、山下氏は分析する。

ペダルペール ニーナカラーの購入顧客数の構成比
ペダルペール ニーナカラーの購入顧客数の構成比 今回の新商品ペダルペール ニーナカラーは、ゴミ箱全体に比べて、狙い通りエッセンシャルワーカーの割合が高くなった。21年3月度~21年8 月度のデータより
今回の新商品ペダルペール ニーナカラーは、ゴミ箱全体に比べて、狙い通りエッセンシャルワーカーの割合が高くなった。21年3月度~21年8 月度のデータより

 市場環境やニーズの変化に対し、仮説を持ち、徹底したアンケートや顧客データによって裏付けを積み重ねていく。まさに基本であり王道に思えるが、その着実なステップが、ペダル式・小容量という次世代のスタンダードを素早く見つけ出し、消費者の心を捉えたといえそうだ。

(写真提供/アスクル)

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