アスクルの商品開発の裏側に迫る本連載。今回取り上げるのは、消費者向けEC「LOHACO(ロハコ)」の主力商品であるレトルトカレー。2020年3月に投入した4食パックの中辛タイプがヒットし、続く21年には辛口タイプを新発売した。ただの味の追加に見えるが、その背景にはデータから導き出された消費者の動向があった。

ロハコはPBのレトルトカレーシリーズを強化。2020年3月に発売した「レンジでぱぱっと野菜と牛肉のカレー(中辛)」と、21年2月発売の新商品「レンジでぱぱっと野菜と鶏肉のカレー(辛口)」。いずれも4パック入りで税込み420円。LOHACO、LOHACO PayPayモール店で販売中
ロハコはPBのレトルトカレーシリーズを強化。2020年3月に発売した「レンジでぱぱっと野菜と牛肉のカレー(中辛)」と、21年2月発売の新商品「レンジでぱぱっと野菜と鶏肉のカレー(辛口)」。いずれも4パック入りで税込み420円。LOHACO、LOHACO PayPayモール店で販売中

 2012年、アスクルが消費者向けECサイト「LOHACO(ロハコ)」を立ち上げる際、目玉商品として用意したのがレトルトカレーだった。サイト内に「カレーならロハコ」という売り場を設けるなど、「レトルトカレーは大きな柱の1つとして位置づけ、強化してきた」と、マーチャンダイジング本部LOHACO生活用品統括部食品担当の立花智子氏は話す。

 これまで、ロハコではNB商品に加え、主にタイのマッサマンカレーやインドカレーなど、志向性の高いPB(プライベートブランド)商品を開発してきた。だが、レトルトカレー市場が成長を続けているのを受け、「メインストリームとなり得る商品をつくろうという機運が社内で高まった」(立花氏)。それが19年9月ごろのことだ。当時、大手食品メーカー製の4食パックの低価格レトルトカレーがロハコでも売り上げを伸ばしており、この低価格帯の領域をカバーする収益性の高いPBレトルトカレーの開発に着手することを決断した。

ロハコオリジナルのレトルトカレーのポジショニング
ロハコオリジナルのレトルトカレーのポジショニング
オリジナル商品は、中高価格帯のエスニック系を中心に展開。市場で主力の低価格欧風カレーの複数パックゾーンは、主に大手NBがカバーしていた

 開発を始めた当時、低価格帯のレトルトカレーは湯煎が必要な商品が主流だった。また、具材が溶け込んでおり、野菜の食べ応えを感じにくいものも多かった。そんな中、「簡便性と具材感それぞれを高めた商品を投入すれば差別化につながり、また単価を高くしても選んでもらえるのではないか」と同社は判断する。そこで、パッケージには多少コストは上がるが、袋のまま電子レンジで加熱できるタイプを採用。また、玉ネギやニンジン、ジャガイモなどをあえて大きくカットして野菜感を打ち出した。そうして生まれたのが、「レンジでぱぱっと野菜と牛肉のカレー(中辛)」だ。

袋のまま約2分で加熱できるレンジ対応パウチによって、他メーカーの商品との優位性を図っている
袋のまま約2分で加熱できるレンジ対応パウチによって、他メーカーの商品との優位性を図っている

 大手食品メーカーの従来NB品が1食100円(税込み、以下同)弱なのに対し、今回のPB商品は1食105円程度とやや高い。だが、20年3月に4食パックを売り出すと、コロナ禍で在宅ワークが増えたこともあり、すぐに完売するほどの人気商品となった。販売再開後も再び欠品するなど人気は衰えず、販売開始から約半年後に集計した直近3カ月の販売データで見ると、新開発のこのレトルトカレーが“ド定番品”のパックご飯に次ぐ2位に躍進した。

カレーは、男性の新規顧客の獲得に期待できる

 好調な結果を踏まえ、次に取り組んだのがシリーズ化だ。新開発したPBレトルトカレーは、ロハコとPayPayモール店で販売をしていたが、それぞれの販売実績を比べると面白いことが判明した。PayPayモール店での伸長率がとても顕著だったのだ。

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