アスクルの商品開発の裏側に迫る本連載。今回は、2020年11月に15年ぶりの完全リニューアルを敢行した、オリジナル商品の「スティックのり」を取り上げる。利用者の現場ヒアリングやアンケート調査を駆使して見えてきたのは、意外な使い方をしたときの“接着力”だった。

アスクルのPB商品「オリジナルスティックのり」と「スティックのり色ナビ」。介護や教育などの現場の声を反映させながら、15年ぶりにリニューアルを敢行
アスクルのPB商品「オリジナルスティックのり」と「スティックのり色ナビ」。介護や教育などの現場の声を反映させながら、15年ぶりにリニューアルを敢行

 アスクルが文具として取り扱うのりには、「テープのり」「スティックのり」「液状のり」の3タイプがある。中でも、テープのりは作業の利便性から近年需要が伸び続けている。一方、テープのりに比べて安価なスティックのりは、販売数自体は減少傾向ではあるものの、コスト意識の高いユーザーに支えられて(図1の左)、購入客数は依然として最も多い(図1の右)。この状況を踏まえ、「スティックのりへのお客様のご不満や困りごとを解決することで、より多くの顧客を獲得できるのではないかと考えた」とリニューアルを担当したアスクル マーチャンダイジング本部 文具 事務用品担当の鈴木夏穂氏は話す。

■ 【図1】アスクルにおけるのりの種類別販売推移(左は売り上げ、右は購入者数)
■ 【図1】アスクルにおけるのりの種類別販売推移(左は売り上げ、右は購入者数)
テープのりの売り上げが伸びる一方で、スティックのりも継続して多くのユーザーからの支持を集めている

 アスクルでは近年、文具部門の戦略として、PB商品の強化に取り組んでいる。特に、“10年選手”と呼ばれるロングセラー商品の真価を見直すことを重要課題と位置付けている。「働き方が変われば、商品の役割ももちろん変わる。お客様の声を集めながら、その裏側をしっかりと調べないといけない」と、同マーチャンダイジング本部 文具 部長の尾高一志氏は狙いを話す。その上で、リニューアルすべき商品の優先順位を付けている。

 スティックのりについては、ウェブの利用者調査でも「のりの接着力が不十分」というような声が多く上がっており、「お客様からの支持が下がっているのが見て取れた」(尾高氏)。そこで、「オリジナルスティックのり」と色づくタイプの「スティックのり色ナビ」という2つのPB商品を、15年ぶりにリニューアルする決断を下した。

現場で見かけた意外な使い方がリニューアルの基礎に

 まず、取り組んだのが、改めて「誰がメインターゲットであるか」を知ることだ。ユーザー調査を実施した結果、保育園、幼稚園、小学校などの教育と、介護・福祉の部門であることが分かった。同時に、これらの現場では、封かん作業や工作などが主な使用用途であることも判明(図2)。「教育、介護の現場の特性を考慮し、園児や高齢者が使用しやすい商品の開発が必要だと考えた」(鈴木氏)。

■ 【図2】仕様用途・仕様理由のユーザーアンケート調査結果
■ 【図2】仕様用途・仕様理由のユーザーアンケート調査結果
アスクル商品全体の構成比と比べ、スティックのりを使うユーザーは教育や介護・福祉の業種が多く、さらにその両業種では、封かん作業や領収書の貼り付け、工作での使用が多いことが分かった

 次に、現場でどのような課題があるのかを調べるために、介護施設などを訪問した。そこで目にしたのが、スティックのりの意外な使い方だった。封かん作業を行う際、封筒にのりを塗って貼り合わせる工程を1枚1枚繰り返すと考えていたが、封かんの量が多い現場では、複数枚の封筒を並べてのりを塗った後に、まとめて貼り付けていたのだ(下写真)。「広い範囲にのりを塗るため、貼り付けるまでに想定以上の時間がかかっていた。通常、スティックのりの接着力は、塗布してからの経過時間によって接着力は弱まっていく。これがお客様からの不満点や困りごとの原因の可能性があり、この点を改良できれば満足度が高くなるのではないかという仮説を立てた」(鈴木氏)。

封筒のまとめ塗りのイメージ
封筒のまとめ塗りのイメージ

 その後、この仮説を検証するために、アンケート調査を実施。スティックのりを購入する際に重視する点をユーザーに尋ねたところ、「価格」や「容量」などのコスト面、「初期接着力(貼りたての接着力)」「貼って時間がたってからの接着力」といった接着力、「のりの塗りやすさ」や「蓋の開けやすさ」といった操作性を求める声が特に目立った(図3)。加えて、それぞれの項目について、アスクルのPB商品への満足度を問う設問では、コスパと初期接着力面では満足度は比較的高かったものの、「時間がたってからの接着力」「塗りやすさ」「蓋の開けやすさ」の3点では、大手NB商品に比べて満足度が低めに出た。そこで、買いやすい価格を維持したまま、この3点を見直そうとリニューアルの方針を固めた。

■ 【図3】購入時に重視する点のユーザーアンケート調査結果
■ 【図3】購入時に重視する点のユーザーアンケート調査結果
購入時に重視する点についての調査では、コスパ(価格・容量)、接着力、塗りやすさにこだわって商品を選ぶユーザーが多いという結果に