アスクルの商品開発に迫る本連載。今回取り上げるのは、教育現場やオフィスになくてはならない「ホワイトボードマーカー」。2016年に発売したインク容量2倍の新商品はブレイクに至らず、19年にリニューアルした「筆記距離2倍」の新モデルが好調に推移。なぜリニューアルが成功したのか、裏側に迫った。
塾や学校での授業の他、企業の会議シーンなどで用いられているホワイトボードマーカー。アスクルのロングセラー商品として安定的な販売を続けてきた。そんな中、2016年に、スタンダードタイプのインク容量を2倍に増やした新商品を開発し、投入した。しかし、ユーザーから、想定していたような評価が得られず、販売も苦戦。そこで、19年2月には同社の文具としては早いサイクルでのリニューアルに踏み切った。
リニューアル後の同商品は、スタンダードタイプに比べてインクを増やしている点では16年モデルと同じだが、「筆記距離2倍」をうたっていることが最大の特徴だ。コロナ禍を契機にテレワークや遠隔授業が広がり、現場での需要面では逆風が吹いたものの、20年8月の売り上げは前年同期比170%を超えるなど、リニューアル後は堅調に推移している。
「インク容量2倍」でニーズを捉えたはずが……
そもそも16年に発売した「インク容量2倍」の大容量モデルは、定期的に行っているユーザーニーズや不満の調査から生まれた。
アスクルでは、商品がどの業種で使われているのかといったデータを継続的にチェックしている。その際、ホワイトボードマーカーは、塾などの教育現場での使用が全体の約25%に上り、圧倒的に多いことが分かった。そこで、実際に教育現場に出向き、困りごとを中心とした聞き取り調査を実施。結果、浮かび上がったのが、「もっと長く書けるものが欲しい」「すぐにインクが切れてしまう」といった、「インクの持ち」に関する不満の多さだ。ここから着想を得たのが、1本で長く書けることを目指し、インク容量を2倍に増やした新商品だ。
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