多くの人が肌ダメージに困っていた

 肌にやさしいばんそうこうは、本当に売れるのか。メーカーと技術的な検証を続けるのと並行して、ユーザーニーズの調査を進めた。永井氏はアスクルの会員にウェブアンケートを実施した。ばんそうこうによって受けた肌ダメージについて聞くと、「白くふやける」が最も多く70.5%、次いで「かゆくなる」が39.3%、「かぶれる」が25.3%、「剥がすときに痛い」が21.6%と続いた。「全体の91.1%が何らかの肌へのダメージ経験があると回答した」(西原氏)。

ばんそうこうによって受けた肌ダメージの内容(回答者数847人)
ばんそうこうによって受けた肌ダメージの内容(回答者数847人)

 さらに肌ダメージの内容と年齢性別との関連性分析をすると、高齢者は「かぶれる」「かゆくなる」、19歳以下は「剥がすときに痛い」という項目との相関が高いことが分かった。つまり「高齢者は肌が菲薄化して乾燥肌、敏感肌の比率が高くなるためかぶれやすく、若年層は剥がすときに痛みを感じやすい傾向がある」ことを確認できた。

 最終的に商品化を判断する後押しになったのが、アンケートに設けた自由記入欄への書き込みだ。この欄に最も熱心に回答したのが、介護・福祉関連に携わる人だった。勤務内容として「介護・福祉」を選んだ201人のうち、半数の101人が、何らかの意見を記入していた。「これほどの割合の人が記入するということは、介護・福祉の現場でばんそうこうに切実な不満を抱えている人が多い証拠」(永井氏)だ。これらのコメントを見ると、ばんそうこうによって皮膚がかぶれる、剥がすときに表皮がむける、褥瘡(じょくそう)になる、長時間貼れないなどの書き込みが多かった。

従来のばんそうこうに対する介護現場の声
  • 皮膚が乾燥しているので、必要以上に粘着してしまう。剥がすときに皮膚も剥がれる
  • 高齢者は基本的に肌が弱く皮膚が薄くなっていたり、乾燥したりしており、傷が付きやすくてかぶれやすい。粘着力が強いと二次的な傷を付けることになる
  • 粘着力が強いと、剥がすときに皮がむける
  • 皮膚が薄いので剥がすとき、粘着部分と接していたところが赤くなってしまう
  • 剥がすときに痛がる

 教育現場で働く人の書き込みにも切実な意見が見られた。「肌が敏感な子供がかぶれにくいばんそうこうを購入したい」「小さい子供は剥がすと痛がって困る」「アレルギーを持つ子供が多く、容易にばんそうこうを使えない」など、子供ならではの課題が多いことが分かった。

従来のばんそうこうに対する教育現場の声
  • 敏感肌の子供は、かぶれる
  • 小さい子供は剥がすときに痛がって困った
  • 小学生以下は、アレルギー反応などが起きやすい
  • アレルギーや肌が敏感な児童も多く、ばんそうこうの選択には苦慮している

 これらの現場からの声に触れて、西原氏と永井氏は「肌にやさしいばんそうこうには可能性がある」と確信。新商品開発を加速させた。

 そもそも、肌にダメージを与えないばんそうこうにはどのような条件が求められるのか。肌のかぶれや痛みを引き起こす要因は、角質の剥離にある。ばんそうこうの粘着面に角質が密着して一緒に剥がれてしまう。そうすると皮膚のバリア機能が失われ、外部刺激を受けやすくなるのだ。角質剥離が起こりにくいばんそうこうであれば、この問題が解決できる。

やさしい絆創膏の素材には、ウレタン不織布とウレタンゲル粘着剤を採用した。従来のビニール素材のばんそうこうに比べて、ざらりとした感触に特徴がある(写真提供/アスクル)
やさしい絆創膏の素材には、ウレタン不織布とウレタンゲル粘着剤を採用した。従来のビニール素材のばんそうこうに比べて、ざらりとした感触に特徴がある(写真提供/アスクル)

素材開発に難航

 だが、肌にやさしいばんそうこうの開発は、容易ではなかった。これまで剥がれにくくすることに注力していたメーカーにとって発想を大きく変える必要があり、「粘着剤やテープの素材から見直す必要があった」(永井氏)からだ。

 角質剥離を起こさないためには、従来よりもばんそうこうの粘着力を弱める必要がある。しかし、それによってばんそうこうが皮膚から簡単に剥がれ落ちてしまっては意味がない。これを適度なバランスで実現する技術の開発は困難を極めた。

 角質が剥がれやすくなる条件の1つに蒸れがある。また肌が突っ張ると刺激となり、かぶれの原因となるので、ばんそうこうは肌の動きに合わせて柔軟に追従する必要がある。

 これらの条件を満たすため、ばんそうこうのテープ部分の素材にウレタン不織布を採用した。ウレタン不織布には関節など曲げ伸ばしする部分に貼っても動かしやすいという特徴がある。粘着剤部分には、角質を剥がしにくいことと同時に、低アレルギー性が求められる。この条件を満たす、ウレタンゲル粘着剤を採用した。しかし、粘着剤とテープには相性があるため、それを検証するのにかなりの時間を要した。

 18年3月にメーカーのリバテープ製薬(熊本市)から4種のサンプルが提出されたが、ばんそうこうが重なる部分から剥がれやすいことが分かった。そこで医療材料に知見のある素材メーカーも開発に加わった。検証を繰り返すうちに、粘着剤の種類を変えることでこの問題は解決した。