アスクルの商品開発の裏側に迫る本連載。今回は、小さな傷の応急処置に活躍するばんそうこうを取り上げる。貼るとかゆくなったり、かぶれたりする課題を解決した「肌にやさしい」ばんそうこうを開発。介護や教育の現場を中心に売り上げを伸ばしている。

アスクルのオリジナル商品「やさしい絆創膏」。介護や教育の現場の声を反映して、適度な剥がしやすさで肌にダメージを与えないばんそうこうを開発した(写真提供/アスクル)
アスクルのオリジナル商品「やさしい絆創膏」。介護や教育の現場の声を反映して、適度な剥がしやすさで肌にダメージを与えないばんそうこうを開発した(写真提供/アスクル)

 事業所向け通信販売サービスを手がけるアスクル。そのラインアップは、文具・事務用品や生活用品など約740万点にも及ぶ。幅広い業種のユーザーを抱えているが、中でも構成比が大きいのが医療・介護業種だ。2004年から医療・介護関連用品を販売してきた。

 これまでの連載で紹介してきたように、アスクルはオリジナル商品の開発に力を入れている。医療・介護分野では、特にばんそうこうの開発に取り組んできた。包帯やガーゼ、脱脂綿、サージカルテープ(包帯やガーゼを固定するための医療用テープ)など多様な衛生材料を扱っている。それらの中でも、ばんそうこうは「多くの業種でニーズがあり、売り上げが大きい」(同社マーチャンダイジング本部メディカルの永井絵里沙氏)からだ。

 新たなばんそうこうを開発するため、まず従来品の課題を探ることから始めた。そのとき重視したのは、ばんそうこうのユーザーとして自分の体験だ。マーチャンダイジング本部メディカル部長の西原利仁氏は、子育てを経験する中でばんそうこうを頻繁に使ってきた。あるとき、子供がけがをしたのでばんそうこうを貼ろうとすると「剥がすと痛いから貼りたくない」と言われたことがあったという。「肌の感覚は年齢や体質によっても異なり、ばんそうこうを負担に感じる人もいることに気づかされた」と西原氏は振り返る。

 市場では、化粧品やシャンプー、食器用洗剤、入浴剤などで敏感肌用をうたった商品が増え、売り上げも伸ばしていた。サージカルテープやドレッシング材(創傷被覆材)でも肌が弱い人向けの商品がトレンドになっていた。

 肌が弱い人向けの商品が増えている理由は主に3つある。1つは高齢者の増加。老化により肌が菲薄(ひはく)化してしまうのだ。菲薄化とは、真皮(しんぴ)が薄くなり、肌が痩せ細る現象のこと。真皮は、表皮の内側にある組織で肌の形や弾力を保つ役割を果たす。2つ目は後天性の敏感肌の人が増加していること。資生堂の調査では、20~30代の女性の約75%が敏感肌だと認識しているという。3つ目は、医療現場で患者の負担をできるだけ小さくしようという意識が高まっていることがある。

 ただ、当時はなぜかばんそうこうには、肌にやさしい商品がなかった。「ばんそうこうでも肌の弱い人向けの商品のニーズがきっとあるはず」と永井氏は考えた。

 永井氏はまず、従来よりも肌にやさしい商品を生産してもらうメーカーを探すことにした。メーカーに商品コンセプトを説明すると、「斬新な発想で面白いという反応が返ってきた」(永井氏)。それというのも、メーカーに寄せられるばんそうこうについてのクレームは、剥がれやすさに対するものが多いからだ。そのためメーカーは、剥がれにくくすることに注力しており、強い粘着力によって肌にダメージを受ける人がいることを想定していなかった。

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