企業向けEC「アスクル」と消費者向けEC「LOHACO(ロハコ)」を運営するアスクルとメーカーの商品開発の舞台裏を紹介する本連載。ソフトパック入りティッシュの開発プロセスを解説した前回に続き、第2回では、販促キャンペーンとその成果を商品の改良に反映するプロセスを紹介する。
アスクルのECサイト「ロハコ」で18年3月に先行発売された日本製紙クレシア(東京・千代田)の「クリネックス ローションティシュー 肌うるるソフトパック(以下、肌うるるソフトパック)」。紙製の箱ではなく、ビニール製のソフトパックに入っているのが特徴だ。
前回は下の図「開発販売プロセス」の4、品質の良さを訴求することで中国製と差異化できると判断し、参入を決断したところまでを解説した。今回は、4の後半、小型サイズを追加したところから、7の販促施策としてレビューキャンペーンを打つまでのプロセスを解説する。
アスクルとメーカーが共同で商品を開発するメリットは、ECサイトに投稿されたユーザーレビューや購買履歴といったデータを活用できるところにある。特にレビューはユーザーのニーズを知るために重要な役割を果たす。開発前には競合製品のレビューも含めて分析し、商品企画に反映できる。さらに、発売後にはレビューから、ユーザーが商品の価値を理解しているか、不満に感じていないかなどの問題点を把握できる。ここで課題が見つかれば、商品を改良する。
こうしたデータを活用した商品開発に多くのメーカーが魅力を感じている。そのためメーカーと共同でロハコのデータ活用を推進するための研究拠点「LOHACO EC マーケティングラボ」(以下、ラボ)の加盟企業は年々拡大し、現在143社になっている。
日本製紙クレシアは肌うるるソフトパックの仕様を決める際に、レビューをフルに活用した。中国製ソフトパック商品のユーザーレビューを分析すると、ソフトパックタイプをバッグなどに入れて持ち歩いて使用するニーズが多いことが分かった。そのため、サイズを150組入りのボックスタイプよりも一回り小さい、幅182ミリ、高さ75ミリ、奥行き115ミリ(240組入り)と設計した。

さらにレビューでは「日本製を買いたい」という声があったが、これを中国製の品質に対する不満と理解した。そこで、肌にふれた際にしっとり感じる保湿タイプの紙を採用。このタイプは、頻繁に使用しても肌を傷つけにくく、外出先で大量のティッシュを消費する花粉症に悩むユーザーを取り込むことができる。
もう1つこだわったのが、外装フィルムの質感だ。「厚みのあるフィルムを採用し、形崩れしないようにした。またティッシュの柔らかさを表現するため、フィルム表面につや消し加工を施した」と日本製紙クレシア営業推進本部長兼eコマース部長の髙津尚子氏は話す。中国製ソフトパックティッシュに対して、パッケージの形や手触りを高めて紙質の良さを伝える狙いがある。
ロハコの商品ページでは、商品の利用シーンをイメージしやすい画像を掲載し、「ゴミの廃棄が楽に」「フィルム包装なので、水回りでも安心」「コンパクトに収納!」という3つの特長が一目で伝わるようにしている。
ソフトパックティッシュのような、比較的新しい商品の場合は特に、実際に使ってみた人の感想などが書かれたレビューを見て、購入するかどうかを決めるユーザーが多い。そのため、レビューをロハコに投稿したユーザーに200円相当のポイントを付与するキャンペーンを発売当初から実施した。
さらに発売したのが花粉症の時期だったこともあり、花粉症に関連した商品を集めた特設ページを作成。そのページに肌うるるソフトパックを掲載して、アピールした。これらの施策の効果によって、発売直後からの1カ月ほどで350件と十分な件数のレビューを集めることができた。
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