シニア市場を開拓するキーワード「新3K(健康、気配り、気づき)」に基づいて成功事例を分析する特集の第4回。オースタンスが運営する「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」は、利用者の平均年齢が57.5歳というシニア御用達のSNSだ。同社では、このSNSを中心に3つのシニアビジネスを展開している。
シニアが集まるSNSを軸に展開する新ビジネス
「シニア世代」という言葉から「介護」や「終活」といったネガティブな連想をする向きは多いかもしれない。しかし、この世代はいろいろな“しがらみ”から解放され、経済的にも時間的にも余裕のある人も多い世代だ。
東京・新宿に本社を置くオースタンスはエンターテイメントの力を活用して社会課題を解決するベンチャー。同社の「おとなコミュニティ事業」は、年齢を重ねることをポジティブに捉えることで、まだまだ健康なシニア世代をターゲットにしたビジネス展開を図っている。同社の菊川諒人社長は「人生100年時代、シニア世代といわれる人たちにも元気な人は多い。そういう人たちが輝ける場所を提供したい」と語る。
オースタンスの「おとなコミュニティ事業」は、中高年層特化型のSNS「趣味人倶楽部」、50歳以上を参加条件にダンスレッスンと公演の場を提供する「おとなスクール」、平均年齢60歳超のパフォーマー集団「シニアモンスターズ」のマネジメントという3本柱で構成されている。同社のビジネスのポイントは、特集第1回で紹介した「新3K(健康、気配り、気づき)」を巧みに取り入れつつ3つの事業をリンクさせている点だ(関連記事 シニア攻略に「新3K」 実売30万部の女性誌を育てた読者調査とは)。
3本柱の中心となっているのは、約34万人の会員を擁するSNS「趣味人倶楽部」。「おとな世代を趣味でつなげる」をテーマとする同SNSの会員の平均年齢は59.3歳、約7割が50歳以上となっている。月間のPV(ページビュー)は2000万、UU(ユニークユーザー)は115万に上るとのことで、経済的・時間的余裕のあるシニア世代をターゲットにした各社の広告出稿料を収益源としている。
オースタンス おとなコミュニティ事業部趣味人倶楽部責任者の松下まど加氏は「コミュニティーによってばらつきはあるものの、全体で月当たり約1600件のオフラインイベントが開催されている」と語る。SNSの場合、“インターネット上の交流”の域を出ないことが多いが、「趣味人倶楽部」の場合は事情が異なるようだ。
その理由は、「趣味人倶楽部」が“定年を迎えて会社という組織を離れた人たち”や、“子育てから解放された人たち”が新しいコミュニティーを求めて参加する場所となっているからだ。同僚や子育て仲間といった、それまで自分が所属していたコミュニティーから離れたとき、別の“居場所”が必要なことに「気づく」のかもしれない。
「『趣味人倶楽部』は実名制ではないので、オフ会でもニックネームで呼び合っている。素性を明かしていないことが、逆に安心感につながっているのかもしれない」(松下氏)
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー