シニア市場を開拓するキーワード「新3K(健康、気配り、気づき)」に基づいて成功事例を分析する特集の第1回は、シニアに大人気の女性誌「ハルメク」。約2600人の読者モニターを組織し、その本音を引き出す調査ノウハウで、シニアが求める新3Kのニーズに対応。シニア市場を席巻している。
少子高齢化が進む日本において、シニア市場の攻略は多くの企業にとって重要なテーマだ。ただ、一口に「シニア」と言ってもマーケットとしては複雑であり、一筋縄ではいかなかったというのが実態だろう。そこで日経クロストレンドは、シニア市場で伸びている商品やサービスを取材し、共通項を抽出した。それが、「新3K(健康、気配り、気づき)」だ。
シニアにとって、「健康」は最も関心度が高いテーマだ。人生100年時代を迎え、心身両面の健康を維持したいという思いはこれまで以上に強くなっている。アクティブなシニアも、未病に悩むシニアも、健康への欲求は総じて高い。
とはいえ、高齢者として特別扱いをし過ぎるのも反発を招いてしまう。「シニア向け」とうたった途端に、その商品は売れなくなる、と言われるゆえんだ。さりげなく配慮する、適度な「気配り」が求められる。また、人生100年時代を生きるシニアは気持ちが若い。新しいことに挑戦する意欲もある。そこに向けて、魅力的で新しい価値=「気づき」を提供できれば、支持を得られるはずだ。
この特集では、この新3Kでシニア市場の攻略に成功した事例を5回にわたって紹介していく。
シニアに大人気の女性雑誌がある。ハルメクが発行する月刊誌「ハルメク」だ。ハルメクは2016年4月、月刊誌「いきいき」から名称を変更した定期購読誌で、ターゲットは50歳以上の女性。ファッションや美容、健康、お金、料理、著名人のインタビューなど、幅広い情報を掲載している。
日本雑誌協会が発表した2019年1月から3月期までのハルメクの月刊平均印刷部数は、24万9667部。前年同期の平均が17万8333部なので、約40%増になる。
ハルメクと同じ女性シニア向けの月刊誌「毎日が発見」(KADOKAWA)の19年の同時期の部数が7万部、月刊誌「ゆうゆう」(主婦の友社)が6万6150万部。この数字からも、ハルメクが驚異的な売れ行きであることが分かるだろう。しかも、ハルメクは書店での販売がないため、印刷部数と販売(実売)部数はほぼ同等。日本ABC協会が発表した2019年上半期(1月から6月)のハルメクの月刊平均販売部数は24万8015部で、取材時(19年12月現在)は約30万部とさらに伸びている。
ハルメクは、前身の会社が09年にシステムや物流センターへの過剰投資・借入先の破綻など複合的な要因から民事再生法の適用を申請。その経営再建をきっかけに、読者目線で作る雑誌で顧客との信頼関係を築き、通販事業でオリジナル商品を販売するというビジネスモデルを確立した。そして現在、「読む」「買う」「体験する」という3つの軸でシニア市場を席巻している。売上高も伸長しており、19年3月期は約106億円。約8割が通販での売り上げだという。
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