グーグルの発表で量子コンピューターが現実に?

【富岳(ふがく)】

 科学的課題や社会的課題の解決に、今やスーパーコンピューターの計算能力は不可欠といえる。

 文部科学省が推薦している次世代スーパーコンピュータープロジェクトの一環として開発され、12年9月から19年8月まで稼働していたスーパーコンピューター「京(けい)」は、様々な企業・研究機関が産業利用枠・一般利用枠などで使用され、高度な計算能力を必要とする課題の解決を支援した。

 19年5月には、京の後継機として開発されているスーパーコンピューターの名称が「富岳(ふがく)」に決定。文部科学省のFLAGSHIP 2020 Projectの下、理化学研究所と富士通が共同で開発中の富岳は京の100倍のアプリケーション実効性能を実現しており、21年の運用開始を目指している。その目的は、現代社会の課題と科学分野における重要問題の解決。健康長寿社会の実現、防災・環境問題、エネルギー問題、産業競争力の強化、基礎科学の発展といった重点課題に取り組んでおり、そこで培われたノウハウは様々な分野の課題解決に役立てられると期待されている。

 ITが進化し、高度な計算能力をクラウド上から利用できるようになった現在では、スーパーコンピューターの活用シーンが広がっている。最高峰のパフォーマンスを持つ富岳が本格運用される近未来は、様々な分野で革新的なイノベーションが生まれる可能性を秘めている。

【量子コンピューター】

 0と1で示すビット単位で演算を行う現在のコンピューターとは異なり、「重ね合わせ」の概念を用いた量子ビットという単位を使う「量子コンピューター」は、最新のスーパーコンピューターも比較にならないほどの処理能力を持つ。実現性の低い“夢の技術”と考えられていたが、従来のスーパーコンピューターでは約1万年かかる計算を量子コンピューターが数分で解き「量子超越性」を実証したとグーグルの研究チームが19年10月に発表。にわかに注目が高まっている。

 実際に量子コンピューターが実用化されるまでには、まだまだ長い時間が必要と考えられているが、グーグルの発表で実現の可能性が出てきたことは確か。現在のコンピューターの処理能力に限界が来ている状況で、卓越した処理能力に加え、消費電力を抑えて低コストで運用できる量子コンピューターの必要性は極めて高い。

グーグルが開発した量子プロセッサー「Sycamore(シカモア)」。実験結果について他社が異議を唱えるなど、新たな議論が始まっている
グーグルが開発した量子プロセッサー「Sycamore(シカモア)」。実験結果について他社が異議を唱えるなど、新たな議論が始まっている

【Wi-Fi 6】

 標準化団体の米国電気電子学会(IEEE)が策定し、無線LANの業界団体Wi-Fiアライアンスによって認定された次世代の無線LAN規格「Wi-Fi 6(802.11ax)」の標準化が迫っている。既にスマートフォンやタブレット、ノートPC、Wi-Fiルーターなどの対応製品が発売。20年から本格的に普及が進むと考えられている。前規格の「IEEE802.11ac」までは「IEEE802.11xx」という表記ルールだったが、Wi-Fiアライアンスが「Wi-Fi +(世代ナンバー)」という分かりやすい表記とすることを18年に決定。Wi-Fi 6は第6世代のWi-Fi規格ということになる。

 Wi-Fi 6は従来のWi-Fi規格との互換性を保ちながら、最大9.6Gbpsの高速通信に対応。速度だけでなく安定性が強化されているのが特徴で、多くのデバイスが存在する環境においてもつながりやすく、遅延も最小限にとどめる技術が採用されている。このため、一般家庭はもちろん、店舗やオフィス、学校の教室といった高密度の環境において優れたユーザーエクスペリエンスを実現する。

 次世代のセキュリティー規格「WPA3」や、公衆無線LANの安全性向上を目的とした新規格「Wi-Fi CERTIFIED Enhanced Open」の普及と併せ、新時代のWi-Fiが体験できる日も遠くはない。Wi-Fi 6は無線LANに接続するデバイス数の増加に対応した規格といえ、第5世代移動通信システムの「5G」と共に、モバイル生活やビジネスに新たなイノベーションを創出することが期待されている。

新たに世代ナンバーが採用されたWi-Fi規格。最新のWi-Fi 6は安定性が高く、接続端末数が多くても快適な通信を実現する
新たに世代ナンバーが採用されたWi-Fi規格。最新のWi-Fi 6は安定性が高く、接続端末数が多くても快適な通信を実現する