※日経トレンディ 2020年1月号の記事を再構成

厳選したキーワードから、近未来の日本に起きることを予測する特集の3回目。様々な業界で人手不足が続く中、救世主として期待されているのが「サービスロボット」だ。警備や清掃、介護などの分野で実用化が近づいている。

SEQSENSEの警備ロボット「SQ-2」
SEQSENSEの警備ロボット「SQ-2」
サービスロボットの普及で人手不足を解消!
1 警備や清掃、介護などの3K職業に進出
2 人間のスタッフとロボットが「協働」
3 オフィス街のデリバリーなど新ビジネスも

 2018年以降、日本の有効求人倍率は恒常的に1.5倍を超えており、慢性的な人手不足が続いている。特に深刻なのが、きつい、危険、汚いといわれる3K職場。19年9月の有効求人倍率を見ると、保安(警備員など)8.02倍、土木5.62倍、介護サービス4.46倍、清掃2.26倍と、猫の手も借りたい3K職場は無数にある。

注)有効求人倍率は厚生労働省の「職業別一般職業紹介状況[実数](常用〈含パート〉)」から

 そこで救世主として期待されているのが、人の代わりに働ける「サービスロボット」。18年ごろから様々な実証実験が始まっており、実用化が近づいている。

 三菱地所は、東京・丸の内エリアの高層ビルなどで、清掃、警備、運搬などを行う様々なロボットを積極的に導入して検証している。同社DX推進部の渋谷一太郎氏は、「例えば、何百万円もする清掃ロボットを清掃会社がいきなり購入するのはハードルが高い。当社でいったん購入したうえで複数の清掃事業者に使ってもらい、適切な運用方法や問題点などのノウハウを蓄積すれば、様々なビルに導入するときの参考になる」とその狙いを話す。

 ロボット化の効果は大きい。一例を挙げると、横浜ランドマークプラザに導入した新型清掃ロボットは、これまで2人で7時間かかっていた作業を2時間に短縮。スタッフは、準備とトイレ清掃など、人にしかできない業務に専念可能になった。

 ロボットが実用的になったのは、性能が向上し、価格も下がってきたからだ。特にAI(人工知能)やセンサーの進化で、ロボットが自己位置を認識して障害物を避ける能力は飛躍的に向上した。「清掃ロボットも、数年前は“迷子”になって戻ってこられない製品が多かったが、今は障害物があっても避けて走行できるものがほとんどになった」(渋谷氏)。

 位置精度をとことんまで高めたのが、警備ロボットの「SQ-2」。自動車の自動運転などに使われる高精度の赤外線センサー「3D-LiDAR(ライダー)」によって、自己位置や障害物の動きなどを細かく識別できる。これにより、消火栓や非常口などのチェックすべき場所を指定するだけで、自動的にロボットが巡回ルートを決定できるようになった。また、ビルのエレベーターシステムと連係させれば、エレベーターを乗り降りして別フロアを巡回することもできる。手で開けるタイプの扉は通れないが、開発元であるSEQSENSEの中村壮一郎代表は「何でもロボットに任せようとして機能を増やすのではなく、人と役割分担させつつ運用するのが現実的」と考える。

 一方、「ビルを設計する際にロボットの利用を前提にすれば、もっと任せられることが増える可能性がある」(渋谷氏)のも事実。同社には今後の大規模開発で、ロボット活用を前提としてドアやエレベーターなどの建物設備を設計する構想もある。

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