テレワークの急速な普及で従業員同士あるいは企業と従業員の関係が疎遠になり、会社へのロイヤルティーが下がることも懸念されるwithコロナ時代。企業の理念や価値観、ブランド力はどのような意味を持ち、どうあるべきか。国内におけるブランディング研究の第一人者で、ブランド・ジャパン企画委員会委員長を務める一橋大学大学院教授の阿久津聡氏に、2回に渡って話を聞いた。

 2021年4月からソニーグループと社名を変更するソニーが、このところ好調な業績を上げ続け、「復活」の呼び声が高い。ソニーの業績の浮沈はブランド評価調査「ブランド・ジャパン」のランキングにも現れている。

 「世界のソニー」ブランドが通用していた時代、「ブランド・ジャパン2002(以下、発行年のみで表記)」および「2003」では堂々の1位、その後も2位、1位などと「2010」まではトップ10内をキープするものの、「2011」で12位に転落した後は「2014」の2位を除いて20位以下を低迷していた。ところが、「2018」で14位に浮上、その後15位とふたたび上昇の兆しを見せている。

 この変遷を同社のミッション、スローガンから見てみると面白い符合がある。ソニーの株価が史上最高値の1万6590円をつけたのは2000年。当時の出井伸之社長は「リ・ジェネレーション」(第2創業)と「デジタル・ドリーム・キッズ」というブランドスローガンを掲げた。阿久津氏はこう語る。

阿久津 聡氏
一橋大学大学院 経営管理研究科教授
日本マーケティング学会副会長、日本PRアワード審査員、日本ブランディングアワード審査員、ブランド・ジャパン企画委員長などを務める。企業ブランドが象徴する経営理念によって従業員の健康まで実現する「健康経営ブランディング」を提唱している。

 「デジタル・ドリーム・キッズは、当時のソニー・ブランドが進むべき方向性を一言で言い切ったという意味で、優れたスローガンとして評価されました。しかし、それが実際にブランド構築を牽引する強いメッセージとなったのは、その具現物としてロボット犬『AIBO(アイボ)』や『プレイステーション』などがあり、関係者に具体的なイメージを付与することができたからだということは重要なポイントです。決して口先だけではなかったということです」

 だが、ITバブルが崩壊するとソニーの株価は衰退の一途をたどり、「ソニーショック」を引き起こした。リーマンショックも重なって業績は悪化し、12年には4期連続最終赤字で株価は700円台まで落ちた。

 どん底で社長に就任した平井一夫氏はミッションを再定義し、改革を図った。そのキーワードが『感動』である。この路線は吉田憲一郎社長(現会長兼社長CEO)に代わっても引き継がれ、『感動を突き詰めていくことがミッションだ』と語っている。『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』ことを企業の存在意義としたのだ。

出井氏が社長だった頃に掲げていたフレーズの1つに「デジタル・ドリーム・キッズ」がある。こうした出井⽒の先進的姿勢が功を奏し、ネットバブルに湧いた2000年には過去最⾼の業績を上げ、株価も1万6000円を超えるに⾄った。しかし、その後ソニーからはインターネットにつながる画期的製品は出現しなかった。フラットテレビ生産にも乗り遅れ、“イマイチ”なソニー商品が脈絡なく店頭に並んでいった
出井氏が社長だった頃に掲げていたフレーズの1つに「デジタル・ドリーム・キッズ」がある。こうした出井⽒の先進的姿勢が功を奏し、ネットバブルに湧いた2000年には過去最⾼の業績を上げ、株価も1万6000円を超えるに⾄った。しかし、その後ソニーからはインターネットにつながる画期的製品は出現しなかった。フラットテレビ生産にも乗り遅れ、“イマイチ”なソニー商品が脈絡なく店頭に並んでいった
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