ブランド・ジャパンの調査結果からブランド構築における成功の鍵を探る本連載。第1回は、2019年度の調査で注目感の指標で初登場ながら1位になったハズキルーペを取り上げる。10年度の初登場以降、ブランド力を高めているダイソンと比較しながら、強いブランドを育てるためのポイントを探る。
「ハズキルーペ、大好き」「ハズキルーペ、すごい」と、ここまでやるかというほど商品名を連呼するテレビCMを覚えている方は多いだろう。Hazuki Company(東京・港)のメガネ型ルーペ「ハズキルーペ」のCMだ。舘ひろし、武井咲、小泉孝太郎、松岡修造など人気タレントを起用し、商品名と特性を訴え、壊れにくさを示すため、お尻で商品を押しつぶす。このCMは、消費者に鮮烈な印象を残した。今回の連載を機に取材した同社の松村謙三会長はこう語る。
「字を大きく見せてくれるので目の筋肉に負担をかけず、長時間かけていても楽なのが特徴。ゆがみのないレンズを作るために高品質の金型を使い、全自動の最新工場で生産している。こうした商品の品質を消費者に分かりやすく伝えるCMを制作した。イメージ広告では商品は売れない」
ブランド・ジャパンの調査で、ハズキルーペのブランド力が躍進していることが分かった。18年11月7日~12月5日に実施した19年度調査では、初登場ながら総合力が1000位中264位だった。過去10年間の初登場ブランドは480ブランドほどあり、それらの総合力の平均順位は762位。この数字からも、ハズキルーペのブランドパワーは際立っていることが分かる。
注目感でiPad、ニンテンドースイッチを上回る
ブランド・ジャパンでは調査対象を決める事前調査として「ブランド想起調査」を実施、消費者にとって「好ましい」「評価できる」ブランドを自由回答で聞き、上位1500ブランドに対して本調査を実施する。過去10年間の初登場ブランドを注目感(いま注目されている、旬である)の順位で見ると、ハズキルーペが1位、2位以下はiPad、ニンテンドースイッチ、ヒートテック、メルカリなどが並び、ダイソンは10位。初登場で注目感が1位だったブランドはハズキルーペだけだ。
初登場で上位に入るブランドの共通点は、注目感や革新性などを示す「イノベーティブ」因子のポイントが高いことだ。ちなみに、ブランド・ジャパンでは4種類の因子を評価している。「フレンドリー」は親しみ、「コンビニエント」は品質感・便利さ、「アウトスタンディング」は卓越さ・独自性、「イノベーティブ」は革新性を示している。これらの因子は偏差値化されており、平均が50ptになる。ハズキルーペのイノベーティブ因子は93.2ptですば抜けて高い。これは、テレビCMが強いエピソードを持ち、マスコミやSNSなどでも取り上げられ、良くも悪くも多くの人が話題にしたいと思っているブランドだからである。
またその革新性は従来にない商品であることだ。両手を使えるメガネ型ルーペであり、眼鏡の上からかけて利用できる。ブルーライトをカットする機能なども搭載し、耐荷重100kg(ラージタイプは耐荷重80kg)でも壊れない柔軟性と耐久性を備える。
ただし、他の因子は平均並みか以下のものもある。フレンドリー因子が平均以下となっているのは、イノベーティブと相反しやすい概念であることや、ブランドに直接接する機会がまだまだ少ないためでもある。コンビニエントが低めなのも国民全体から見れば利用者層が限定されているためだが、逆に見れば伸びしろがあるともいえる。アウトスタンディングはブランドのカテゴリーとして、機能や社会に対する姿勢の独自性さを表すものなので、ハズキルーペというブランドがまだ浸透し始めている段階なのだと解釈できる。
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