「バブソンの持つ方法論は本当に人の意識に影響を与え得るのだろうか?」。第4回ではバブソン大学の実際のカリキュラムを紹介しながら、その問いについて探っていく。企業内でイノベーションを生み出す組織文化や人材育成を検討している方々にとって参考になるはずだ。
バブソン大学のカリキュラムを紹介する前に、第1回、第2回で紹介したバブソンが教える5つの起業家教育の方法論について、改めておさらいをしたい。
- (1)Action/reflection trumps everything(行動/省察がすべてに勝る)
- (2)Start with means at hand(今、手元にある手段で始めよ)
- (3)Know how much you can accept or afford to lose(今、自分がどれくらい失えるかを知れ)
- (4)Enroll others to join your journey(他者を巻き込め)
- (5)Uncover your desire(何よりもあなたの欲求を大切に)
上記の5つである。これを踏まえた上で、バブソン大学でどのようなカリキュラムが組まれているのか、2年制のMBAコースを例に取りながら、その概略を紹介することから始めよう。カリキュラムを細やかに見ることで方法論がいかに実装されているかの理解がより深まれば幸いである。
バブソンのカリキュラムは必修科目を中心とした1年目と選択科目を中心とした2年目に分かれる。特徴的なのは、必修科目だけで構成される最初の秋学期(約3カ月間)に当たる「モジュール1」だろう。秋学期はモジュール1とモジュール2に分かれている。
モジュール1に含まれる科目は以下の通りだ。
- Entrepreneurship(アントレプレナーシップ)
- Managing People & Organizations(リーダーシップ・組織行動学)
- Financial Reporting(会計)
- Finance(ファイナンス)
この4つの科目を並行して受講していくのだが、その並びをやや不思議に感じる方もいるのではないだろうか。実はこのモジュール1にこそ、バブソン大学の思想が詰まっているともいえる。
まずはアントレプレナーシップの授業を見てみたい。戦略やマーケティングといった一般的にビジネスの基礎的な素養であるといわれている科目を受ける前から、この授業は始まる。この授業で課されるのは、事前に割り当てられたチームでビジネスアイデアを練り上げ、それを最後の授業で外部の投資家と教授陣に対してプレゼンテーションを行うことだ。起業準備の実践に近い科目だ。
この授業では、ビジネスアイデアの検討からプロトタイピングなどローンチプラン(バブソンでは、ビジネスプランの代わりにローンチプランという言葉を使う)を策定するのに必要な要素を押さえていく。
ビジネスアイデアを検討するために戦略やマーケティングといった科目を事前に受けなくてもいいのだろうか。そう考える読者もいるかもしれない。一般的なビジネススクールの戦略やマーケティングのクラスでは、「過去」の実例について、ケーススタディーという手法を通じて学ぶことが多い。そこには学んだことがそのまま活用できるという「因果関係」が存在するからだ。
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