本連載では2回にわたって、バブソン大学が教える起業家教育の5つの方法論を紹介してきた。そして今回はなぜバブソンの方法論や、トヨタ自動車の豊田章男社長が言う「自分のドーナツを見つける」ことが現在の日本に必要なのか。バブソン大学から見た日本の現在地を、データが示唆する内容を基に探っていく。

バブソン大学の授業の様子
バブソン大学の授業の様子

 下図で日本は5.3%となっている。この意味が分かるだろうか。

 これはTEA(トータル・アーリーステージ・アントレプレニュアル・アクティビティー)と呼ばれ、起業活動率を示している。18~64才の起業家的活動に従事している人口および会社設立から42カ月までの事業運営者(≒起業家)の人口の割合を示す値である。日本は2017年の4.7%から増加はしているものの、調査対象の48カ国中44位と低水準となっている。さらにそのなかで、以下の2つの指標に注目してみたい。

各国のTEA(トータル・アーリーステージ・アントレプレニュアル・アクティビティー)比率の比較
各国のTEA(トータル・アーリーステージ・アントレプレニュアル・アクティビティー)比率の比較
出所:Global Entrepreneurship Monitor, 2018/2019 Global Report

 IDO of TEA:必要性に迫られてではなく、より高次の動機のために行われる起業家的活動を示す

 EEA:企業内での起業家的活動を測る指標。収入レベルが高くなるにつれ増える傾向にある

 これらを足し合わせて収入レベルが高い国で並び替えてみると残念ながら日本は最下位だ。一方、ドイツなどは企業内での起業家的活動の高さが表からは見て取れる。

 この指標は、1999年に設立されたグローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)プロジェクトを基に、世界各国の起業状況を毎年まとめた世界最大規模の起業関連データから抽出したものである。世界各国400人以上のリサーチャーが関わり、指標項目は多岐にわたって毎年進化している。対象国は70カ国を超え、世界総人口の75%、世界GDP(国内総生産)の90%をカバーする。GEMは複数の学術組織によって運営されており、筆者が教鞭を取るバブソン大学も主幹組織の一つである。

 GEMが独自に持つ起業家の社会との関わりを表すフレームワークは (1)社会的な起業インフラの状況、(2)起業家的活動に対する社会的な価値意識、(3)個人の特性や属性、(4)起業家的行動の4つからなっている。言い換えるならば、起業家的活動そのものと、その主体者である起業家の特性および取り巻く環境についてそれぞれを指標化し、観測しているということになる。なお、GEMレポートは無料で一般公開されているので、興味がある方は是非ご自身で見てもらいたい。

GEMが独自に持つ起業家の社会との関わりを表すフレームワーク。起業家的活動そのものと、その主体者である起業家の特性および取り巻く環境は相互で作用し、それが雇用創出や価値創出といった社会的な成果につながる(「Global Entrepreneurship Monitor, 2018/2019 Global Report」を基に筆者が作成)
GEMが独自に持つ起業家の社会との関わりを表すフレームワーク。起業家的活動そのものと、その主体者である起業家の特性および取り巻く環境は相互で作用し、それが雇用創出や価値創出といった社会的な成果につながる(「Global Entrepreneurship Monitor, 2018/2019 Global Report」を基に筆者が作成)

 そこで考えてみたいのは、起業家の役割とは一体なんなのかということである。なぜ彼らが必要なのか。一般的に起業家は雇用や富を創出することで、社会を前進させる役割を担うとされているが、より実証的な研究でもそれが裏付けられている。

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