起業家教育(アントレプレナーシップ)に特化した教育機関の米バブソン大学。本連載の第1回は同大学の方法論を5つに分解し、そのうちの3つを紹介した(関連記事)。今回は残る2つを解説しよう。トヨタ自動車の豊田章男社長の言う「ドーナツ」と起業家教育の交点が見えてくる。

起業家教育(アントレプレナーシップ)に特化したバブソン大学は、人の繋がりを重視する(写真/Shutterstock)
起業家教育(アントレプレナーシップ)に特化したバブソン大学は、人の繋がりを重視する(写真/Shutterstock)

 「Entrepreneurship is the pursuit of opportunity beyond the resources you currently control.(アントレプレナーシップとは、現在コントロール可能なリソースを飛び越えて機会を追求することである)」

 ハーバード大学のハワード・スティーブンソン教授は、アントレプレナーシップをそのように定義している。何が言いたいのかというと、起業家というのは基本的に「持たざる者による挑戦」なのだということだ。持っていないのならば、ビジネスを進めていく上で必要となるさまざまな資源を外部から調達する必要があるのである。そのためには様々なステークホルダーを巻き込み、仲間をつくらなければならない。

 だから、バブソンでは(4)Enroll others to your journey(他者を巻き込め)と教えている。良い起業家というのは、得てして頼り上手なのである。

 また、多くの仲間ができるほど、新たな発想も湧いてくる。それも利点だ。言い古されたことではあるが、アフリカのことわざにもあるように、結局は「早く行きたいなら1人で行け、遠くへ行きたいなら大勢で行け」ということなのである。人脈づくりを重視するバブソンのエピソードを1つ紹介しよう。

バブソン・ネットワークが生まれる仕組み

 バブソン大学の特徴は起業家教育に特化したカリキュラムだが、もう1つ大切にしているものがある。それは「人と人のつながり」である。大学は卒業生・在校生が定期的に集う機会づくりに注力しており、卒業生との関係構築・維持のための独立した部署まで存在している。その中心にあるのが、毎年1度開催都市を変えながら開かれる「BABSON CONNECT/WORLDWIDE」だ。いわゆる同窓会である。とはいえ、単なる同窓会ではない。人脈づくりの重要なイベントだ。

 創立から100年となる2019年は、9月18日~22日にかけて「Babson Centennial Celebration」と題して、ホームであるボストンで盛大に行われた。

 この会に筆者2人も参加した。昼の時間帯にはセミナーや講演が行われ、夜にはたくさんのネットワーキング(社交)の機会が用意されていた。華やかな社交の世界の中で、学生達は少しでも見知っている、あるいは話すきっかけのある先輩や教授がいれば、自分が取り組んでいる事業や探している機会について話す。若き起業家達はこの機会を逃すまいと、短いプレゼンテーション、つまり「ピッチ」をしていくのである。

 卒業後母国に戻り起業活動をしている者たちが、このような機会で、教授や仲間を見つけてはピッチをする。日本ではなかなか見慣れない光景かもしれないが、バブソンのイベントではあたりまえだ。集まってくる群衆の中心にいるのは悪い気はしない。長年会っていなかった卒業生と話すことで、自身の情報をアップデートするのに最適の場である。勿論ここから実際の資金調達に繋がるケースはある。

 起業家の多くは資産のない人たちだ。スタートアップはいつだって資金繰りとの戦いである。多くの経営者は銀行口座の減りゆくキャッシュとにらめっこしながら、その舵取りをしなければならない。だからこそ、個人間のつながり、社会的ネットワークの構築が求められる。バブソンの同窓会は、そのつながりをつくるうえで重要な役割を担っている。

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