AI(人工知能)の進化の行方を知るには、AIが全ての技術史の中でどのような位置にあったかをまず知らねばなりません。現在のAIがどのように生成されてきたかが分からなければ、AIのこれからを見通せません。今回はAIが生まれた歴史を振り返ってみましょう。
あらゆるテクノロジーは、世の中で飽和するほど使われた段階で次の世代へと移行します。18世紀後半、第1次産業革命が起こりました。労働力といえば人間を指しましたが、作業を自動化する機械が英国で誕生。大量生産が可能な労働力を人類は手に入れました。
機械は直ちにコピーされ、世界中の隅々にまで行き渡りました。人類が最初に持ったレイヤー、それが機械でした。
その後蒸気から電気へ動力が変化し、第2次産業革命が起こります。機械は電動機械となり、またすぐにコピーされて世界中にまん延していきます。20世紀に入ると、コンピューターが出現。世界に行き渡った電動機械はコンピューターによって自動制御が可能になり、またもや直ちに大量にコピーされて世界中に広がっていきました。
すると今度は、コンピューター同士をつなぐインターネットが出現します。スイスの欧州合同原子核研究機関(CERN)の研究者が発明したWWWによって世界中はWebで覆われ、インターネットの層が形成されることになります。インターネット上では、次第に個人が情報を発信するようになり、ネット上は多種多様な情報であふれ返り始めます。個人が把握できるはるかに超えた量となり、統制が利かない情報が氾濫する時代を迎えました。
氾濫してしまった膨大な情報を制御する必然性から起こったのが、まさに今私たちが向き合っている第3次AIブームです。インターネット上の膨大な情報を学習データとして用いることが可能になり、急速にAI技術は進化を遂げました。
ポストAI
ここまでがAIが生まれた歴史です。では、これからAIはどうなっていくのでしょうか。
AIもまたインターネット上であふれ出しますから、多種多様なAIが世界に入り乱れていくでしょう。すると、行き着く先はこれまでなかったような知的機能を備えたソフトウエアが生まれるはずです。そのパターンは2種類が考えられ、一つは「知的機能ソフトウエアを使いこなす上位のAI」、もう一つが「知的機能ソフトウエアを使いこなす人間」です。前者を「自律型統合AI」、後者を「人間拡張」と呼びます。
前者の自律型統合AIは、あまたあるAI群を管理するような上位レイヤーに存在するAIです。AIがAIをコントロールするイメージです。
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