デジタルゲームの開発現場から、AIによって未来の社会がどう変化するのかを描く本連載。2回目となる今回は、AIを使ったビジネスに企業が取り組む際に、どのような視点を持って臨むことが重要かを説く。
一般的にAI(人工知能)は、問題を限定すればするほど実現しやすくなる性質があります。これは、現在のAIが抱えている「フレーム問題」と呼ばれる特性に起因するものです。具体的には、「自分自身では問題を作り出せないが、人間が与えた問題に対しては、人間以上に賢く解ける」のです。
逆に言えば人間は、AIに問題を与えるという使役を担うことができます。これからAIビジネスを考える場合、この視点が重要です。現在のAIはやや“大きな絵”を描きすぎと言えるでしょう。効率的にAIを運用するには、AIで取り組むべき適切なサイズの課題に限定する必要があります。大きすぎても小さすぎても、効率はよくありません。どのようなサイズの問題をAIに対して提供できるかどうか、AIを使いこなすセンスが問われることになりそうです。
AIは技術基盤から個々の問題解決へ
これまで大企業は、米グーグルの「TensorFlow」などディープラーニング(深層学習)のためのソフトウエアライブラリーや、米IBMの「Watson」をはじめとする(数式やプログラミング言語に基づく)記号主義型のマシンを提供してきました。これらは具体的な問題に対するソリューションではなく、AIの足場そのものを築くものでした。
AIの基礎が大企業の力によって出来上がりましたが、いずれも長期的かつ戦略的な試みだったため、中小企業やベンチャー企業が追随することは難しかったのが実情でした。ただ大企業が基礎部分を作り上げてくれたおかげで、今後はいよいよ現実的な課題解決のために様々なAIソリューションを構築するフェーズに移っていきます。中小企業やベンチャー企業は、課題を見いだし、それを解決するソフトウエアを構築して社会に提供することに取り組むべきでしょう。
こうしたことから、基礎部分を担うインフラの戦いは2019年を境に終息し、2020年からはいよいよAIは個々の具体的な事例で有効性が問われることになります。
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