デジタルゲームはAI(人工知能)の実験場であり、時代に先駆けてやがて現実で起こる変化を先取りしてきました。利用者はキャラクターを通してゲームに参加し、その世界の中で様々な形で社会を形成できます。こうしたことから、ゲームにAIを導入してきた経験を通して、今後AIが人間社会にどのような影響を及ぼすのか見えてくることがあります。

ゲームにおけるAIの進化を踏まえると、今後人間社会はどう変わっているのだろうか(写真/Shutterstock)
ゲームにおけるAIの進化を踏まえると、今後人間社会はどう変わっているのだろうか(写真/Shutterstock)

 本連載では、AIが今後どのような進化をし、その過程で未来の現実社会がどんな姿になるのかについて描いていきます。

リアルとデジタルが相互作用する「ミラーワールド」

 かつてデジタルワールドとリアルワールドは分離していました。デジタルワールドは、ゲームやインターネット、コンピューターの中などにあり、リアルワールドからは完全に孤立した世界として存在していました。しかし今、デジタルワールドとリアルワールドの間に様々な懸け橋が生まれ、両者の間にあった垣根が打ち壊されようとしています。

 理由の一つが、GPS(全地球測位システム)などを使って把握した現実の位置と、デジタルワールドにおける位置をリンクさせる技術の登場です。代表的なのが、「Ingress(イングレス)」や「Pokémon GO(ポケモンゴー)」といったAR(拡張現実)を使った位置情報ゲームです。プレーヤーは、リアルワールドを走り回りながらデジタルワールド上でゲームをプレーします。例えば、ゲーム内の「ポータル」と呼ばれる拠点を奪取するためには、そのポータルに対応しているリアルワールドのある場所に行く必要があります。

 もう一つの理由が、IoT(インターネット・オブ・シングス)技術です。AIやロボットがリアルワールドを認識するのではなく、逆にリアルワールド界に埋め込まれたIoTデバイスが積極的にリアルワールドの情報をデジタルワールドに転送し続けることが可能になりました。

 このように、リアルワールドの情報をリアルタイムに写し取ってデジタルワールドを作り上げる手法を、「デジタルツイン」と呼びます。そして、リアルとデジタルの2つの世界を合わせたものを「ミラーワールド」、またミラーワールド化された都市全体をAI化する構想は「スマートシティ」といわれます。

 デジタルツイン、ミラーワールド、スマートシティの3つに共通するのは、リアルワールドが常時デジタルワールドと相互作用しながらお互いを更新し続け、リアルワールドとデジタルワールドが同期していることです。

「デジタルツイン」「ミラーワールド」「スマートシティ」の関係(提供/スクウェア・エニックス)
「デジタルツイン」「ミラーワールド」「スマートシティ」の関係(提供/スクウェア・エニックス)

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