セールステックのツール・サービスは細分化が進む(関連記事「営業のDXを加速させる101のツールを網羅 必見カオスマップ」)。企業は業種や業態、自社の営業課題に合わせて必要なサービスを選択できるようになった。クラウド向けセキュリティーサービスを企業にSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)で提供するHENNGEは、体制を整備しながらセールステックをフル活用。営業の効率化を図り、2019年9月期の売上高総利益率は80%を超えた。

HENNGEはさまざまなセールステックのツール・サービスを活用する
HENNGEはさまざまなセールステックのツール・サービスを活用する

 HENNGEは、米セールスフォース・ドットコムのSFA(営業支援システム)「Sales Cloud」の導入を皮切りに、複数のセールステック関連ツール・サービスを数年かけて採用。営業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化を進めている。「従来の営業活動は生産性が低いうえに、営業担当者個人の人材としての市場価値も高まりにくい。『営業3.0』をコンセプトに掲げ、デジタルネーティブな営業組織をつくる」。デジタル・インテリジェンス・セクションの水谷博明マネジャーは、セールステックを積極的に導入する理由をそう語る。

 営業3.0はHENNGEによる造語。1.0は現場重視の従来型の営業。2.0はSFAなどのセールステックを取り入れた営業。そして、3.0は営業担当者が自らデータを分析して、MA(マーケティングオートメーション)ツールなども使いこなす、デジタルマーケターの素養も身に付けた、デジタルネーティブな営業を指す。

 セールステックの導入と併せてインサイドセールス部門を立ち上げるなど、組織も変えて効率化を進めてきた。同社の2019年9月期の売上高総利益率は、前年同期比4.6ポイント増の82.3%となった。セールステックを活用した営業の効率化が高収益体質に貢献している。

HENNGEはSFA(営業支援システム)「Sales Cloud」を軸に、MA(マーケティングオートメーション)やBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを連携させて、営業の効率化を図っている
HENNGEはSFA(営業支援システム)「Sales Cloud」を軸に、MA(マーケティングオートメーション)やBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを連携させて、営業の効率化を図っている

 上図は、HENNGEが活用するセールステックの構成を表している。Sales Cloudはすべての顧客データが集まる基幹的な存在だ。Sales Cloud上で活用する「WalkMe」は、営業担当者がマニュアルなしでツールの操作を習得できるようにするナビゲーションツール。営業部門にSFAの利用を定着させる役割を担う。

 Sales Cloudと連携して、AI(人工知能)搭載のIP電話「MiiTel」、MAツール「Marketo」を活用する。電話営業やメールを活用したマーケティングデータを、SFAで顧客データとひも付けて管理する。

 データの分析にはBI(ビジネスインテリジェンス)ツール「MotionBoard」を用いる。Sales Cloudに蓄積している既存顧客のデータだけではなく、リードリストの作成サービス「Select DMP」を活用し、第三者データで受注確度の高い新規顧客をアタックリストとして取得。新規顧客に関するデータも併せて分析する。

 複数のセールステックを使いこなすHENNGEだが、営業部門にツール・サービスを定着させるうえでは苦労を重ねた。ツール・サービスの導入を一方的に通達するだけでは現場が使いこなせず、コストがかかるだけの無用の長物になりかねない。「営業担当者がきちんとSFAにデータを入力してくれないと、連携する他のツール・サービスも効力を発揮できない」と水谷氏は言う。とはいえ、「セールスフォースの既存のアプリは使いづらい」(水谷氏)。

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