特集「セールステック進化論」の第5回のテーマは「アップセル/クロスセル」「顧客のロイヤル化」の2つ。CRM(顧客関係管理)の領域だ。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)に顕著だが、BtoB(企業間取引)でも継続率やLTV(顧客生涯価値)が経営指標として重視され始めている。契約し続けてもらえる企業になるための営業支援サービスを紹介する。

カスタマー・サクセス・マネジメントによって、コールセンターを収益部門にする動きが活発化(写真/Shutterstock)
カスタマー・サクセス・マネジメントによって、コールセンターを収益部門にする動きが活発化(写真/Shutterstock)

 SaaS事業者が自社で提供するサービスやツールが、きちんと導入先に活用されているかどうかをモニタリングすることに特化したツール。そんなニッチな領域のツールを2018年12月から提供しているのがHiCustomer(東京・品川)だ。SaaSの多くはこれまで高額だったシステムを、クラウド化してコストを下げ、月額制で安価に提供することで、乗り換え需要を生み出してきた。安価で提供する代わりに、多くの企業に導入して広く市場を取る事業モデルだ。数千社が導入するSaaSは珍しくない。

 導入社数が増えると何が起こるか。「4桁を超える顧客企業がいると、どの企業がサービスを使いこなせているかが分からなくなる」(HiCustomerの鈴木大貴社長)。導入したものの、社内で活用されていないサービスやツールがある場合、企業はどうするか。答えは簡単だ。解約する。当然、提供する側は解約を防ぐために、チュートリアルの動画を公開するなどコンテンツを充実させたり、CS(カスタマーサポート)を強化したりするなど、対策を打つことが多いだろう。だが、「問い合わせをしてくる人は氷山の一角。実際はより多くの顧客企業が不満を抱えている可能性は高い。そこをケアすることが必要だ」と鈴木氏は指摘する。

 解約防止策として日本でも重要性が高まっているのが、導入企業を支援して成功に導く「カスタマー・サクセス・マネジメント」だ。導入企業が成果につながると実感すれば、ツールやサービスの継続利用につながり収益基盤が安定する。さらに、他部門に活用範囲が広がるなど、一社から得られる収益の増加にもつながる。

コールセンターを収益部門にする

 「待ちの姿勢のCSはコストセンターだが、能動的に顧客にアプローチして成功に導くカスタマー・サクセスになると収益部門に変わる。国内でもカスタマー・サクセス部門を作る企業が増えている」と鈴木氏は言う。HiCustomerの提供する「HiCustomer」はこのカスタマー・サクセス・マネジメントを支援する。具体的には、SaaS企業が提供するサービスやツールと連携して、リアルタイムにログデータを取得する。そのデータから、企業ごとに設定したルールにのっとって活用度を評価する。例えば、ログイン率、リポート機能ページの閲覧率などが評価を決める上で重要な指標になる。

 評価は「Good」「Normal」「Bad」の3段階だ。「細かくスコアを設定しても、例えば、81点と89点とで活用状況に大差はない。3段階ぐらいのほうが分かりやすい」(鈴木氏)と判断して、設計した。こうして、活用企業は自社のサービスやツールの導入先をHiCustomerでモニタリングして、Badになっている場合には、どの機能が使われていないかなど、障害になっているポイントを見つけ出し、CSや営業部門が電話やメールでアプローチ。不満点や課題を吸い上げ、使いこなせるように支援する。

「HiCustomer」はSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の利用状況をデータでリアルタイムに把握して、カスタマー・サクセス・マネジメントに活用できる
「HiCustomer」はSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の利用状況をデータでリアルタイムに把握して、カスタマー・サクセス・マネジメントに活用できる

 逆にGoodの場合は、アップセル/クロスセルにつなげられるチャンスだ。特定の機能の利用率が高いといった兆候があれば、上位プランや他部門への導入拡大を提案することで売上増加につなげられる可能性がある。HiCustomerの導入企業の1社は、活用状況が可視化されたことで、解約率を2%から0.1%まで大幅に下げることに成功したという。

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