特集「セールステック進化論」の第3回は「インサイドセールス」の支援サービスを紹介する。これまでの営業活動は訪問が基本。移動が制約となり、全国を商圏にすることが難しい企業も少なくなかった。これが大きく変わりつつある。デジタル技術の発展によって、会社にいながらオンラインで営業をすることが可能になった。これをインサイドセールスと呼ぶ。その先端動向を追う。

これまでの電話営業はその中身がブラックボックスであることが課題だった。次世代電話営業ツールの登場で、インサイドセールス市場が急拡大中だ(写真/Shutterstock)
これまでの電話営業はその中身がブラックボックスであることが課題だった。次世代電話営業ツールの登場で、インサイドセールス市場が急拡大中だ(写真/Shutterstock)

 インサイドセールスの需要の高まりを端的に表すのが、求人数の増加だ。転職サービスのビズリーチ(東京・渋谷)が運営する20代向け転職サービス「キャリトレ」では、インサイドセールスの求人数がこの3年で2.5倍に拡大した。また、同社の次世代の働き方を提案するプロジェクトFuture of Work実行委員会では、インサイドセールスに特化したイベント「Inside Sales Conference」を開催するなど、企業への普及に力を入れる。

 これほど需要が高まっている理由は複数ある。まず、働き方改革だ。営業活動は今も多くが対面で行われている。しかし、必ずしもすべての商談が対面である必要はない。実際に製品を見せる段階など、必然性のある商談だけで良いはずだ。キーエンスのような大手製造業でもインサイドセールスツールの導入が進んでいる。在宅営業も可能になる。企業向けに福利厚生サービスを提供するベネフィット・ワンはオンライン商談ツール「bellFace」を導入して、女性社員が産前・産後に自宅で営業できる環境を整えた。

 もう1つの理由はクラウドの浸透だ。従来、BtoB(企業間取引)のITサービスといえば企業のシステム内に構築するオンプレミス型が主流だった。ここ数年でAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)などのクラウドのインフラが整い、そのインフラ上でアプリケーションを開発して提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)市場が急拡大した。

 SaaS化によって、ビジネスモデルも大きく変わった。SaaSはオンプレミスのような高額の売り切り型ではなく、少額を月額で徴収するサブスクリプション型で提供するサービスが多い。月額数千円のサービスを売るのに、企業ごとに営業担当者を付けていては収益性が低くなる。そこで、自社内のデスクで営業するインサイドセールスが注目を集め始めた。

 こうしたトレンドをいち早く捉えてインサイドセールス市場に参入したのが、bellFaceを提供するベルフェイス(東京・渋谷)だ。2015年の会社設立から一貫して、インサイドセールスの重要性を啓蒙してきた。「創業時、インサイドセールスというキーワード検索数はほぼゼロ。『Web会議』に比べると認知率は低かった。それがこの2年で同等の検索数になりつつある」(ベルフェイスの中島一明社長)。インサイドセールスの認知向上に伴い、顧客企業は拡大。現在は1200社がサービスを導入している。

「Google」における過去5年間の「インサイドセールス」と「Web会議」検索数の推移。2019年はインサイドセールスの検索数がWeb会議を上回ることもあった。「Google トレンド」で直近5年間の検索数の推移を比較
「Google」における過去5年間の「インサイドセールス」と「Web会議」検索数の推移。2019年はインサイドセールスの検索数がWeb会議を上回ることもあった。「Google トレンド」で直近5年間の検索数の推移を比較

 bellFaceはパソコンの動画配信を通じて、オンライン商談を実現するサービス。「Skype」や「Googleハングアウト」といった、ビデオ電話ツールやWeb会議と近しいサービスだが、より営業活動に使いやすいように設計されている。まず、接続環境に依存しない。パソコンやスマートフォンのOSやブラウザーの種類を問わず利用できる。また、会社によってはセキュリティー上、アプリのインストールに制限をかけているケースも多いが、ベルフェイスはアプリのインストールも不要だ。

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