特集「セールステック進化論」の第2回以降は、第1回で紹介した「セールステック・カオスマップ」の営業プロセスのフェーズに合わせて、各社のツールを紹介していく(関連記事「営業のDXを加速させる101のツールを網羅 必見カオスマップ」)。まずは営業活動の第一歩である「見込み顧客の発掘」に活用できるサービスだ。データを活用することで、商談率を大幅に高められる。
実際に購入しそうな見込み顧客の割合を調査すると、わずか1.6%だった。その数字を知ったある法人向けパソコンメーカーの営業部長は驚愕(きょうがく)した。
同社は100人を超える電話営業部隊で、顧客になる対象企業6万社に片っ端から電話をかけていた。従業員200人以上の企業が対象だ。こうした手法はコストがかかるうえに、成約率も低い。それもそのはず、企業がパソコンを一括で入れ替える時期は分からない。やみくもに電話をかけても、パソコンの買い替え時期と合致するケースは少ないからだ。この数字の種明かしは記事の後半でする。
BtoB(企業間取引)事業は多くの場合、新たなサービスやツールを導入するうえで、検討、比較といった期間が消費者向けの製品と比べて長期化する傾向にある。短くても1カ月、場合によっては半年以上かかるケースもある。
そのため、BtoBの世界では「リード」と呼ばれる見込み顧客リストを厚く持ち、そのリストの企業に対してメールやセミナー参加の案内などで関係を保つことが重要だ。そして、ニーズが顕在化したときに、すかさず必要な情報や資料を提示するといった活動が重要になる。見込み顧客を顧客へと育成する施策であることから「リードナーチャリング」と呼ばれる。
匿名でもナーチャリングという新概念
一般的にリードナーチャリングは、名刺交換などをして連絡先を取得した見込み顧客に対して行われることが多い。しかし、昨今、プライバシー意識の高まりなどから、「BtoBであっても個人情報を提供することに抵抗を感じる人が増えている」と、MA(マーケティングオートメーション)ツール開発会社SATORI(東京・渋谷)の植山浩介社長は指摘する。
また、BtoBの情報収集にもデジタルが浸透している。従来は製品やサービスの導入を検討する際、資料請求をすることが一般的だった。このタイミングで売り込む側は資料請求した相手の情報を入手して、ナーチャリングを始めていた。それが当たり前ではなくなりつつある。一般消費者の多くが商品購入前に、WebサイトやSNSなどで情報収集するように、BtoBでも各製品、サービスサイトなどで自分のペースで情報収集をするケースが増えている。実際に問い合わせるのは、十分比較検討が終わった段階だ。その結果、「見込み顧客にアポイントメントを取り付けられない。会えないから、何を考えているか分からない。そういうことに悩む企業が増えている」(植山氏)。
そこで、SATORIは「匿名ナーチャリング」という新たなコンセプトを掲げ、MAツールを開発している。「中小企業の場合、そもそもリードが少ないことが多い。少ない母数に高度なシナリオのマーケティングを展開してもかえって非効率。一方、匿名のリードは当社の顧客企業の平均でも実名リードの30倍超いる。匿名のナーチャリングを考えたほうが成果は出やすい」と植山氏は話す。
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