一休社長の榊淳氏が「データサイエンスの未来」を語り合う対談企画。今回はLaboro.AI(ラボロエーアイ)の椎橋徹夫氏との対談の2回目。検索を前提としたサービスにパラダイムシフトが起きる可能性について考察する。
榊淳氏(以下、榊氏) 前回は、B2C系スタートアップが成功するために「ポジショニング」がカギになるというお話でした。一休もポジショニングに優れた会社と思っていますが、例えば、GAFAが持つ巨大な(人や資金、技術などの)経営リソースや、実際にやっていることを当社と比べると大きな差があります。そこに僕たちは強い危機感を持っています。
椎橋徹夫氏(以下、椎橋氏) 確かにGAFAとは大きなギャップがあると思いますが、それは顧客価値の差として、どう現れているのでしょうか。仮に彼らとのリソースの差が埋まったとすると、一休のユーザーが享受できる価値はどう変わると思いますか。
榊氏 僕たちがグーグルと同じ自然言語処理の能力を持ったら、めちゃくちゃ賢いサイトを作れると思いますよ。
例えばレストラン検索は少し前まで、「渋谷 イタリアン」といった単純な検索が一般的でした。しかし最近は「デート向け」や「夜景がきれい」といった(曖昧な)言葉を加えて検索することが増えています。これに多くのグルメサイトは対応できませんが、グーグルなら対応できる。
では僕たちはどうするかと言えば、グーグルだったらどんなランディングページを用意するかを想像して、例えば「渋谷のイタリアンでデートに向いていて夜景がきれいな店」といったページを作ることになります。
僕たちはレストラン検索に特化しているので、いろんなフレーズに対応したページを作れます。例えば「気軽に行けるフレンチ」といったニーズに対応するページは作れる。でも次に検索されるのは、例えば「シャバシャバなカレー」かもしれない。
グーグルのような自然言語処理能力を持っていないので、(この方向で対応するなら)そんなページを数10万種類も作らないといけなくなる。これではとてもグーグルに追いつけない。
椎橋氏 今のお話は要するに、曖昧な検索キーワードで欲しいものを探す方法のことですよね。ただ僕が最近考えているのは、やがて「検索という行為自体がなくなる」のではないかということです。
今のインターネットサービスのほとんどは検索して使うことが前提です。欲しいものを自分で見つけた人が、それを顕在化、言語化した後のプロセスしかサポートしていません。
これの対極にあるのが、ホテルやレストラン領域などで活躍するコンシェルジュです。彼らは深いドメイン知識を武器にして、顧客が言語化できないニーズを見つけて対応する。それがコンシェルジュの価値ですよね。
その人が欲しそうなものを選択肢として複数提供し、対話を通して欲しいものを探し出す。僕たちは「レコメンドの次はサジェスチョン」という言い方をしています。
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