アリババ集団の持つ流通プラットフォームの中で今、日本企業にとって最も魅力的なのは、中国の地方都市にある中小・零細小売店約130万店をネットワークし、仕入れ、物流、マーケティングなどの機能を提供するBtoBプラットフォーム「零售通(LST)」だろう。LSTとはどんなプラットフォームで、日本企業にとってどんな価値があるのかを、現地から追った。

LSTに参加する中小・零細の小売店のうち、特に収益増が期待できる店を「天猫小店」 と名付けて展開している
LSTに参加する中小・零細の小売店のうち、特に収益増が期待できる店を「天猫小店」 と名付けて展開している

 アリババ集団が展開する「LST(零售通:Ling Shou Tong)」とは、地方の中小の小売店や家族経営で成り立っている零細の小売店、いわゆる“パパママストア”に対して、飲料・食料などを含む日用品・消費財分野で、仕入れ、物流、デジタルマーケティングなどの機能をプラットフォームとして提供し、会員組織(ネットワーク)化したものだ。

 プラットフォームに登録し、ネットワークに参加した小売店は、国内外の多くのブランドやメーカーがLSTの提供するBIツール(専用サイト)上に出店した“旗艦店”を通じて、商品を発注・仕入れできる。発注した商品は、アリババがEC向けに中国全土で構築した物流網を使って店頭まで数日のうちに届けられる。

 アリババグループ LSTビジネス部門ゼネラルマネジャーの林小海(ケビン・リン)副社長は、「このネットワークに参加してプラットフォームを利用する店は、参加する以前よりも収益が大きく増えている」と胸を張る。

LST(零售通:Ling Shou Tong)のビジネスモデル。日本企業はLSTのプラットフォームに商品を預ければ、これまで手が届かなかった中国の地方の消費者にアプローチできる
LST(零售通:Ling Shou Tong)のビジネスモデル。日本企業はLSTのプラットフォームに商品を預ければ、これまで手が届かなかった中国の地方の消費者にアプローチできる

 2016年末から展開し始め、ほぼ3年が経過した現在は、中国全土に630万程度あるとされる中小・零細小売店のうち、北京や上海といった大都市を除く中国の2級都市から6級都市に展開する300万店強のうち、約130万店をネットワーク化した。規模の拡大に成功した結果、スタート当初はわずか1つだった取り扱いブランドは、中国の日用品・消費財ブランドの85%以上にまで急増。LST全体が稼ぎ出した2018年の売り上げは、17年の約3倍に相当する200億元(約3340億円)にまで伸びている。

データを活用して品ぞろえを最適化

 では、なぜLSTのプラットフォームに参加すると、地方の中小・零細小売店の売り上げが急増するのか──。その最大の理由は、データを活用した品ぞろえの最適化にある。

 アリババ集団は、国内向けECとして、消費者同士が売買するCtoCのECサイト「淘宝(タオバオ)」と出店するメーカーの商品を消費者が購入するBtoCのECサイト「天猫(Tモール)」、それに中国国内に拠点を持たない外国メーカーでも出品できる越境ECサイトとして、BtoCのECサイト「天猫国際(Tモールグローバル)」と同じく「考拉(コアラ)」を運営している。これらのECサイトに蓄積された膨大な量の購入履歴を分析すれば、どのエリアのどんな顧客がどのような商品をどんな頻度で購入しているかが導き出せる。この分析結果を、LSTに参加した中小・零細店に提供するのだ。

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