アリババ集団の成長をけん引するのは、今も中国のEC事業である。そのEC事業にとって、人気の高い日本の商品の確保は重要な課題。そのため、日本の中小企業が利用しやすい支援サービスや大企業との共同商品開発体制などを次々に打ち出した。いわば“追い風”が吹く日本企業は、アリババ集団とどんな協業ができるのか。

ECサイト「天猫(Tモール)」のトップページ
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 アリババ集団の業績が好調だ。2019年7~9月期の連結売上高は、前年同期比40%増となる1190億元(約1兆9040億円)、連結営業利益は同51%増の203億元(約3248億円)だった。この好調をけん引するのが、中国で圧倒的な地位を築いたEC事業だ。

 中国の調査会社である易観国際(Analysys易観)によると、19年7~9月期のアリババ集団の国内EC市場に占めるシェアは、63.1%に達した。2位の京東集団(JD.com)との差は開き、前年同期の59.5%からじりじりとシェアを拡大し続けている。

越境ECサイト「天猫国際(Tモールグローバル)」のトップページ
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2019年9月に買収した越境ECサイト「考拉(コアラ)」のトップページ
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 同じく越境EC市場でも、19年9月にゲーム大手であるネットイース(網易)から、越境EC市場でシェア1位だった傘下の越境ECサイト「考拉(コアラ)」を、約20億ドル(約2140億円)で買収。もともと運営していた「天猫国際(Tモールグローバル)」と合わせたアリババ集団の越境EC市場に占めるシェアは、60%弱に迫るまでになった。国内EC市場、越境EC市場とも、圧倒的な地位を築いたことが、この時期の好業績につながっている。

 このアリババのEC事業の中で、売れ筋の商品供給元として存在感を増しているのが、日本企業だ。野村総合研究所がアリババ集団傘下の研究機関「天猫イノベーションセンター(TMIC)」と共同で調査・作成した「中国EC市場白書2019」によると、中国のEC市場を国・地域別の販売金額で見た日本商品(日系商品)の市場シェアは3.2%とまだ低い。だが、逆に言えばこの状況は、日本商品の伸びしろがまだ大きいことを意味する。実際、中国国内での日本商品の人気は高止まりしているといってよい。

 例えば、毎年11月11日、いわゆる「独身の日」にアリババ集団がグループのECサイトで実施する年1回の大セール「天猫ダブルイレブン」開催時の越境ECにおける国・地域別流通総額ランキングを見ると、米国などを抑え、日本が4年連続1位を獲得している(参考記事「アリババ『新小売』拡大 日本企業は中国で稼げるか」)。

アリババ集団で天猫輸出入事業部総経理を務める劉鵬(Liu Peng)氏
アリババ集団で天猫輸出入事業部総経理を務める劉鵬(Liu Peng)氏

 アリババ集団で天猫輸出入事業部総経理を務める劉鵬(Liu Peng)氏は、「今の中国のEC市場では、花王やコーセー、資生堂といった日本の大企業はもちろん、中小企業にも、収益増のビッグチャンスがある」と明言。アリババ集団で天猫ビューティーディレクターを務める楊瑩(You Ei)氏も、「メーカーだけでなく日本の小売事業者にも、ぜひ中国のEC市場に進出してほしい」と話す。

 実際、日本最大のコスメ・美容総合サイト「@cosme」を運営し、天猫と天猫国際に多くのコスメブランドを扱う店を出しているアイスタイル(東京・港)と天猫は19年12月に提携。アイスタイルが19年12月3日に発表した「@cosme ベストコスメアワード2019」の受賞商品のうち天猫で人気のある商品を、「@cosme ベストコスメアワード with Tmall 2019」として、共同で天猫上に発表した。今後も毎年12月3日に、「@cosme ベストコスメアワード with Tmall」を発表していく予定だ。

 @cosmeの評価は「信頼できるクチコミ情報に基づく」と中国でも認知されており、アワードを受賞した商品は、その後、売れ行きが上向く可能性が高い。メーカーの旗艦店だけでなく、アイスタイルが天猫と天猫国際上に出店している店でも、収益増が期待できる。アイスタイルの吉松徹郎社長は、「ユーザーのクチコミ情報という信頼できる基準を中国市場にも広げ、日本のコスメ全体の売り上げ増に貢献できればいい」と展望を語る。

左からistyle China Co.,Limited董事長兼総経理の吉田直史氏、アイスタイル社長の吉松徹郎氏、アリババ集団天猫ビューティーディレクターの楊瑩氏、アリババ日本法人コーポレートPR担当部長の松下英明氏
左からistyle China Co.,Limited董事長兼総経理の吉田直史氏、アイスタイル社長の吉松徹郎氏、アリババ集団天猫ビューティーディレクターの楊瑩氏、アリババ日本法人コーポレートPR担当部長の松下英明氏

 もちろん、メーカーにとってのチャンスは、さらに大きい。大企業の場合、越境ECの天猫国際と中国国内ECの天猫に、それぞれ自社ブランドの旗艦店を出店し、さらに中国都市部のリアル店にも商品を流通させて、収益増を図る。一定の投資額や人員は必要だが、成功した場合に得られるリターンも大きい。

日本の中小企業にとって中国市場の可能性は大きい

 一方、中小企業は、まずは越境ECの天猫国際に旗艦店を出したり、アリババに仕入れてもらうという形でリスクを背負ってもらい、天猫国際上のアリババの直営店に商品を出品したりすることで、中国市場を開拓できるという。劉氏は具体的なブランド名を挙げて、こう説明する。

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