中国の阿里巴巴集団(アリババ集団)が、日本への関わりを深めている。まず、市場シェア1位のECに対して日本企業の進出を促進。次いで、「新小売(ニューリテール)」と称する新たなリアル店舗網にも商品の供給を働きかけている。背景にあるのは中国市場での日本商品の高い人気。日本企業、アリババ集団、小売店がウィンウィンの関係になることを目指す。
消費者同士が売買するCtoCのECサイト「淘宝(タオバオ)」と、出店するメーカーの商品を消費者が購入するBtoCのECサイト「天猫(Tモール)」、それに中国国内に拠点を持たない外国メーカーでも出品できる越境ECサイト「天猫国際(Tモールグローバル)」を抱えるアリババ集団は、EC最大手として中国市場で抜群の存在感を発揮している。
例えば、毎年11月11日、いわゆる「独身の日」にアリババ集団がグループのECサイトで実施する年1回の大セール「天猫ダブルイレブン」を見てみよう。2019年には、20万以上の国内外のブランド・企業が参加し、約100万の新商品を出品。当日の流通総額は、前年比26%増で過去最大となる2684億元(約4兆1602億円)に達した。
実はこの一大セール時の越境ECにおける国・地域別流通総額ランキングを見ると、米国などを抑え、日本が4年連続1位を獲得している。ブランドごとの売り上げランキングを見ても、ベスト10の中に日本企業・ブランドが3つもランクインしているのだ。
アリババ集団で天猫輸出入事業部総経理を務める劉鵬(Liu Peng)氏は、「中国では、特に1990年代生まれの若年層の間で海外の商品へのニーズが高まっている。中でも品質の良い日本の商品の人気は高い」と話す。熾烈(しれつ)な競争を勝ち抜いて中国のEC市場での優位を保ち続けるためにも、アリババ集団は今、中国市場で売れる日本の商品が、喉から手が出るほど欲しいのだ。
越境ECサイト1位を買収
そのため、多くの日本企業をはじめとする外国企業が、中国市場への最初の窓口として利用する越境ECを強化した。19年9月、ゲーム大手であるネットイース(網易)から、越境EC市場でシェア1位だった傘下の越境ECサイト「考拉(コアラ)」を、約20億ドル(約2140億円)で買収したのだ。これで、越境EC市場において、シェア2位の天猫国際と考拉を合わせたアリババ集団の市場シェアは40%弱になった。「日本企業が越境ECサイトを利用しようと考えたとき、迷わずアリババグループを選べばよくなった」(アリババ日本法人の香山誠代表取締役社長 CEO)わけだ。
さらに、アリババ集団が日本企業をはじめとする外国企業に示しているのは、ECでの商品の取り扱いだけではない。アリババ集団は今、中国国内で、デジタル技術を駆使してオンラインとオフラインを融合させた「新小売(ニューリテール)」と称する、様々なタイプのリアル小売店を急速な勢いで展開している。19年7月に創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が実質的に引退し、張勇(ダニエル・チャン)氏が後継者としてアリババ集団CEOに就いた後も、この路線は大きく変更されていない。
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