米国で2019年夏に開かれた音声テクノロジー業界専門のカンファレンス「VOICE Summit 2019」の熱気をお届けする本連載は、今回で最後だ。メイン会場2階でにぎわいを見せていた展示ブースでは、スタートアップ企業などが興味深い関連デバイスやソリューションを多数紹介していた。現場を取材した様子をご紹介する。

会場の一番奥の場所で、絶えず行列ができていたのが米アマゾン・ドット・コムの手掛けるブース。広いスペースに一軒家のような造りを用意し、それは「Alexaハウス」とでも呼びたくなるようなものだった。2018年筆者は、テキサス州ダラス郊外にある音声入出力を使ったユーザーインターフェース「VoiceUI」(VUI)をフル活用する実験型住宅展示場「Amazon Experience Center」を訪れたことがあるが、展示内容はそのミニチュア版のようだった。
Alexaハウスでは、リビングやキッチンなどあらゆる場所にAlexa関連製品が置かれ、スタッフに教わりながらVUIが寄り添う便利な暮らしを実際に体験できた。スマートスピーカー「Amazon Echo」はもちろん、テレビにつなぐネット配信端末「Fire TV」や壁掛け時計などAlexaを内蔵した装置が、見逃してしまいそうな場所にまで置かれていた。これにより、家のどこにいてもVUIが利用でき、複数台ある利点を生かして音楽再生やアナウンス機能を使える点をアピールしていた。
米国ではスマートスピーカーの世帯普及率が40%を超え、半数以上が一家に複数台を設置しているとされる。Alexaハウスを体験すると、それが事実であると納得した。

3つの単語を発話するだけ、新感覚カーナビ
3つの単語を組み合わせて唯一無二の住所を編み出すシステムを手掛ける英ワットスリーワーズは、Alexaスキル対応デモを展示していた。同社は、地球上を3メートル四方に区切り、57兆個のグリッドに分割してある場所を一意に特定可能にした。自動車メーカーがカーナビに搭載したり、宅配業者や旅行会社といった分野で導入されたりしており、最近注目を集めている企業だ。現在日本語を含む26カ国語に対応している。
今回のイベントで発表したAlexaスキルへの対応によって、「Alexa、what3wordsで『sweat.candle.catch』へナビゲートして」のように短いフレーズで宛先を指定できるようになった。カーナビでは通常住所を手掛かりに入力するが、実際に降ろしてほしい場所と微妙にずれていた経験はないだろうか。what3wordsなら、ピンポイントで3メートル四方の場所を特定でき、かつ他の地点と絶対にかぶることがない。3つの単語を発するだけなので、音声入力にぴったりの技術だと言える。
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