音声テクノロジー業界専門のカンファレンス「VOICE Summit 2019」が今夏、米ニュージャージー州ニューアークで開かれた。米国では人気のイベントだが、実は日本人の参加者は2人だけ。筆者が現地で目にした日本には伝わっていない音声入力を使ったユーザーインターフェース「VoiceUI」(VUI)の最前線を数回にわたって報告する。
音声テクノロジー業界専門のカンファレンスVOICE Summit 2019には、26カ国からクリエーター、UX(ユーザー体験)デザイナー、マーケター、デベロッパー、そして投資家ら5000人が一堂に集結した。ボイステクノロジー領域に特化した話題のみを扱い、4日間で合計280ものセッションやワークショップ、ハッカソンなどを開催した。第1回の昨年よりも2.5倍の参加者を集めたことを鑑みても、米国でのVUIに対する注目度の高さがうかがえる。
Voice Summitに参加して確信したのは、ボイステクノロジーは一過性の流行ではなく、パラダイムシフトである事実だ。米国では、もはや基本的な音声コマンドを機械に伝えて天気を調べたり家電を操作したりする段階から、音声を使ってより良い体験をいかに演出して消費者をとりこにするかに業界の関心がシフトしている。
実は米国では音声アシスタント端末が数多く市場に出回っており、日常生活の様々なシーンで活用するのは珍しい光景ではなくなりつつある。例えば米アマゾン・ドット・コムは音声アシスタント端末「Amazon Echo」シリーズで日本未発売の製品をいくつも発表している。最近では、指輪型やメガネ型、ワイヤレスイヤホン型といったウエアラブル端末にまで独自の音声アシスタント技術「Alexa」を搭載し始めている。デバイスだけではなく、使い方も多彩だ。学生寮や病院が、各部屋にAmazon Echoを設置する例も出てきている。
欧州でも、英国政府がAlexaスキルや米グーグルのVUI「Googleアクション」を使って公式に情報を配信するなど、米国に近い盛り上がりをみせる国や地域もある。一時の盛り上がり以降、VUIがあまり浸透していない日本とは比較にならないほど市民権を得つつあるわけだ。
こうした動きに後押しされ、音声アシスタント技術で2強とされるアマゾンとグーグルは競い合うように技術を磨き合っている。グーグルは最近、極めて人間らしい対話が実現できるAI(人工知能)「Google Duplex」を開発。レストランなどで、これまで店員に負担がかかっていた予約をVUIで受け付けられるようにするものだ。
ショッピングを中心としたアマゾン経済圏をAlexaでさらに強くしようとするアマゾン。これに対してグーグルは、数々のソフトウエア資産を生かしてパーソナルアシスタントとして機能を磨き上げる。切磋琢磨(せっさたくま)するおかげで、その恩恵に消費者があずかれている。
VOICE Summitの醍醐味とは何か
さて、VUIの最前線を報告する本連載の1回目となる今回は、VOICE Summitで語られた全体像を紹介する。
米モデブが主催するVOICE Summitは、今年で2回目の開催となり、昨年より1日多い全4日間(7月22日~25日)開かれた。会場は、ニュージャージー工科大学。「2020年までに世界の検索の50%が音声になるだろう」「ボイスは破壊的テクノロジーだ」――。キャンパス内にはこんな刺激的な垂れ幕があちこちに掛かっていた。
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