次代を牽引するビジネスの新潮流を探るべく、ベンチャーキャピタル(VC)やスタートアップ支援企業を訪れる連載の最終回は、東京・渋谷を中心に、ベンチャーと大手企業の共創を生み出すPlug and Play Japan。モビリティー、フィンテック、IoTの注目ジャンルについて、有望なビジネスや注目テーマを聞いた。
——モビリティー分野でのスタートアップ支援や大手企業との共創を積極的に進めていますが、2020年以降の注目トレンドは。
江原伸悟氏氏(以下、江原) センシング技術の進化が急激に進むと考えています。従来の自動車関連メーカーだけでなく、IT企業やスタートアップの新しい技術が必要とされる分野です。中でも面白いのが、キャビン内、つまり車内のセンシングです。
従来、車内向けのセンシングといえば、シートベルトの装着確認といったシンプルなものが中心でした。ですが、ドライバーがハンドルを離したり、うたた寝をしたりすると警告を出すといったものも登場しています。センシング関連で注目しているのが、イスラエル発のスタートアップ、ContinUse Biometrics。
スマートウオッチのように皮膚に触れてセンシングを行う接触型ではなく、非接触で人間の情報を読み取れるのが特徴です。レーザーとカメラを使い、身体のわずかな振動から心拍、呼吸数、血圧などを計測可能。メディカルユースだけでなく、クルマでのドライバーの様子を捉えるのにも活用できそうです。
もう1つ注目なのが、日本のスタートアップであるasilla(東京都町田市)。画像認識によって、人の動きを予測することに特化した技術を開発しています。例えば、人が立っているのか、座っているのか、倒れているのかといった判断も瞬時に可能。車内における人の動きだけでなく、周囲の歩行者の動向などを検知し、危険行動の予測をすることにも使えそうです。
自動運転で「酔い防止」が重要に?
江原 自動運転技術の一般化に伴って、従来にはない技術やサービスにも光が当たりそうです。例えば、車酔い対策。自動運転の場合、クルマがアクセルやブレーキを自動で操作するため、搭乗者(運転者)は挙動を予測しにくくなり、車酔いになる可能性が指摘されています。そこで様々な企業が、音や光、振動などの刺激を用い、クルマの動きを人間にフィードバックすることで酔いの軽減を目指しています。自動運転車というハードウエアが広がるのに合わせ、各メーカーはキャビンを使って顧客満足をいかに上げるかで競うようになると思います。キャビンの快適性を高める技術がどんどん登場してくると予想できます。
——人間が運転から開放されることで、車内向けのエンターテインメントも広がるのではないでしょうか。
江原 そうですね。20年以降は、電気自動車がさらに一般化していくこともあり、クルマがどんどんスマホ化していくと考えられます。車内をいかに快適にするか、楽しくするかといった、サービス面での競争が激しくなると思います。メーカーは、ハードウエアとしてのクルマを作るのではなく、OEM(オリジナル エクスペリエンス マニュファクチャリング)に着目しなければならないと思います。
——トヨタのKINTOなど、自動車のサブスクリプションサービスもスタートしています。海外を含めた動きはどうですか?
江原 少しずつ広がってくると思います。中でも可能性を感じるのが、富裕層向けサービスです。例えば、韓国のEPIKAR。韓国では富裕層はクルマを1人で2.6台持っているという統計があり、利用シーンなどによって乗り換えたり、いろいろなものを試す喜びを感じたりしているというのです。EPIKARはプレミアムカーに特化しているのが特徴です。必要な時だけクルマを使いたいといったニーズであれば、カーシェアリングやレンタカーのほうが手ごろで使いやすい。クルマのサブスクは、保有コストを下げるというよりは、プレミアムなサービスとして広がる可能性があります。
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