デザイン思考を導入してきた企業の現場で、期待と現実、乗り越えた壁、実感できた効果などを担当者に聞き、導入と成功のヒントを読み取ってきたインタビューシリーズの最終回。今回は三井物産のベンチャースタジオ、Moon Creative Lab (ムーンクリエイティブラボ、米カリフォルニア州パロアルト/東京・港)の立ち上げと活動について、Moonのマイク・ペン氏、石山 翼氏、そしてサポートしてきたIDEO Tokyoの野々村健一氏に聞いた。

三井物産が2018年に立ち上げたムーンクリエイティブラボのロゴ
三井物産が2018年に立ち上げたムーンクリエイティブラボのロゴ

弱点を見つめ、“つなぐ”から“つくる”へ

──まずMoonがつくられた背景と、デザイン思考を取り入れられたきっかけをお聞かせください。

マイク・ペン氏(以下、ペン) Moonの立ち上げは3年前でした。もともと三井物産は、巨大な総合商社として成功を収めていました。しかし10年に一度の長期ビジョン策定の中で、現在の業態のままで将来的に成長を続けられるのか、という疑問が提示された。そこで、自力で新しいことを始める力が必要だ、と考えたのです。

石山 翼氏(以下、石山) 私たちはずっと、世の中にあるモノや人を「つなぐ」仕事をしてきました。でも何もないところから新しく「つくる」ことを忘れていたのでは? ゼロから何かを「つくる」こともできる会社になろう、という考えが出発点です。

 そして、新しく「つくる」ことに挑戦するには、巨大で完成された企業体の中よりも、別の場を設けたほうがいい、と考えて始まったのがMoonです。

 世の中にまだないものをゼロからつくり、周りを巻き込んでいく訓練が、私たちにはなかった。そこで先行例をリサーチする中から、人を起点に考え、課題に取り組む「デザイン思考」を知って、「自分たちに必要なのはこれだ!」と思ったんです。

 それまでもデザイン思考に興味を持って個人的に勉強している人は社内にもいましたが、会社としての本格的な取り組みは初めてでした。

 単に新しい事業を立ち上げるだけでなく、企業の文化を変えることをミッションとして考えていたのですが、それには単に手法を導入するだけでは足りない。新しい方法を共につくっていけるパートナーを探して、いろいろな会社とお話しする中で、IDEO Tokyoと出合ったのです。

マイク・ペン氏
Moon Creative Lab Chief Creative Officer
組織戦略立案・運営、並びに、各ベンチャーをデザイン面でけん引。人間中心デザインとクリエイティビティーによりMoonから生まれる新ビジネスの成功を担う。Moon合流前は、IDEO最年少パートナーとしてIDEOTokyoを立ち上げ、同オフィスの共同代表を務めた

「ゼロから1を生み出す」文化を

──相談を受けて、IDEOとしてはどんな印象を持ちましたか?

野々村健一氏(以下、野々村) 大きな組織ではあるけれど、中核には「人」がある、というのが印象的でした。「人の三井」という言い方をされていて、デザイン思考も基本は「人を中心に考えること」なので、そこは最初から一致していました。

 それともう1つ、最初からグローバルで多文化ありきのお話でした。前提として、三井物産はグローバルに展開している。新しいアプローチも日本だけにフォーカスするのでなく、領域も人材も、多文化、多国籍で考えられていた。そこも我々の考え方にマッチしていて、ワクワクしました。

──「“つなぐ”から“つくる”へ」「文化をつくる」「世界で展開」など、話が壮大です。最初はどこから着手されたのですか?

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