連載第2回は消費財メーカーにとって、最もマーケティングをデータに基づいて行う最も合理的な単位が「エリア」だということを「エリアMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)」とともに詳しく解説した(関連記事「テレビCMの効果を劇的改善 エリアマーケティングのススメ」)。そのエリアMMMの具体的な活用法について、3つのステップに分解して紹介しよう。

「エリアMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)」を活用して、3つのステップで地域別の適正なテレビCMの予算配分を算出する(写真/Shutterstock)
「エリアMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)」を活用して、3つのステップで地域別の適正なテレビCMの予算配分を算出する(写真/Shutterstock)

 エリアMMMの活用には、過去数年分の(1)都道府県別の売上データ、(2)都道府県別のテレビCMデータ、が必要になる。都道府県別のテレビCMデータは、2018年にすでに整備されているので入手可能。あとは、都道府県別の売り上げデータを自社内で収集すれば、すぐにでもエリアMMMに基づくテレビCMの効果測定とプランニングが始められる。

 テレビはこれまで、データが不足していて効果が分かりにくく、ブラックボックス化していると言われてきたが、データを入手して分析を行い、マーケティングの意思決定が行えるメディアになりつつある。テレビデータの大変革によって、広告主はデータ・ドリブンでどんな施策や意思決定が可能になったのかを、今回の第3回以降、3回にわたって解説したいと思う。まず、今回は自社の広告投資のROI(投下資本利益率)を向上させる最適なエリア配分の決め方だ。

 テレビデータの大変革は20年4月にピークを迎える。テレビのメディアデータとして業界標準である「視聴率」を長年、調査しているビデオリサーチが「新視聴率計画」を実行するからだ。変革の第一段階として18年に全国のエリア別の視聴率データが入手できるようになった。だが、エリアによっては、半月分しか視聴率が調査されていなかった。全国32放送エリアのうちの16エリアが対象だ。これらのエリアでも20年4月以降は、365日すべての視聴率データが入手可能になる。

 また、これまで多くのエリアでは世帯視聴率しか分からず、F1(20歳から34歳までの女性)やM1(20歳から34歳までの男性)などと呼ばれる、性年齢別の視聴率(個人視聴率)は調査されていなかった。20年4月以降は、すべてのエリアで個人視聴率が調査されるようになる。つまり、広告主は全国の各エリアでF1の視聴率を比較できるようになるなど、自社のターゲット層への到達度をKPI(重要業績評価指標)に設定し、共通指標で地域ごとに管理できるようになるのだ。

 このことは、広告主にとって、デジタルとテレビメディアを統合した分析や管理が可能となり、全体を俯瞰した意思決定ができることにつながる。これについては、次回(第4回)、詳しく解説したい。

 テレビデータに変革が起こることで、広告主は今まで苦労していたテレビCMの投資に対する説明責任(アカウンタビリティー)を果たせることになる。説明責任を果たす、ということを具体的に説明すると、投資の意味があるかどうかを客観的なデータで分析し、効果の高い施策の投資を増やし、逆に低い施策は縮小することができるようになるということである。加えて、結果を振り返り、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回し、ROIの向上を目指せるようになる。では、実際にどのようにテレビCMの効果測定をして、投資配分を変え、PDCAを回して全体最適を目指していくのか、その方法は3つのステップに分解できる。順を追って解説しよう。

問題があるエリアを抽出する方法

 まず、1つ目のステップがBDI(ブランド・デベロップメント・インデックス)とCDI(カテゴリー・デベロップメント・インデックス)という、2つの指標を活用した現状の分析だ。これらを用いて分析をスタートする。BDIの算出には売り上げデータと人口統計データを用いる。特定の地域での1人当たりのブランドの売上高を、日本全体での1人当たりのブランドの売上高と比較することで、自社ブランドの強弱をエリア別に算出できる。数式は下記となる。

BDI =(ブランドXの地域Aでの売上高÷地域Aの人口)/(ブランドXの日本全体の売上高÷日本全体の人口)

 このインデックスが1より低ければ、相対的に自社が弱いエリアだと考える。つまり、日本人口の10%を占めている地域で、自社ブランドの売り上げ全体にしめる構成比が10%を下回っている場合、その地域では自社ブランドが弱いことをBDIから導き出せる。

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