この連載では、テレビを中心にデータドリブンなマーケティングのスキルアップにつながる考え方や手法などについて紹介していく。第1回は用語の整理から始めたい。近年、「データ(ドリブン)マーケティング」という用語が氾濫して、誤用や混同が増えている。それを正しく理解することが必要だ。
下図をご覧いただきたい。まず、Aは広義の「データを活用したマーケティング」のこと。Bは個人を特定しない形で、Cookieデータなどに基づくデジタル広告の配信、いわゆる「デジタルマーケティング」だ。Cはアナログだが、顧客データを活用して個人に対してアプローチするマーケティング施策に当たる。ダイレクトメールなどはその典型例だ。そして、BとCを包含するDが、個人を特定して実施するデジタル施策。例えば、メールを活用した購買履歴に基づくワン・トゥ・ワンのマーケティングである。
ところが、デジタルマーケティングという言葉は、「個人を特定して施策を打つマーケティング」と同じ文脈で使われることが多い。デジタルの世界なら個人データを特定できる。そう勘違いされるケースは後を絶たないが、これは誤りだ。
まず、どこからデジタルマーケティングとの混同が生まれたかを考えるために、個人特定のマーケティングの発展を簡単に振り返ろう。個人特定のマーケティングの起源は、優良顧客に対して優待プログラムやクーポンのオファーを提示する、米国の航空会社のマイレージプログラムだ。
その後、1990年代に一気に米国の小売業に拡大。「フリークエント・ショッパーズ・プログラム」と呼ばれ、購入金額や利用頻度によってサービスや特典を変え、顧客のロイヤルティーを高める手法としてブームになった。日本にもその流れが押し寄せ、各社がポイントカードを発行して競った。
そして、90年代後半にインターネットが登場し、個人の行動を追跡できる技術が発展した。ネット黎明(れいめい)期に、最も早く革新が起こったのはフリークエント・ショッパーズ・プログラムによって既に個人特定のマーケティングが発展していた旅行業界や小売業だった。
アドテクとスマホでデジタルマーケティング普及
ただし、当初は個人データは各サイトに閉じて活用されていた。再訪問者を特定して、購入履歴からレコメンデーションをしたり、検索サービス「Google」のように検索キーワードに連動して広告を出したりする程度の活用にとどまっていた。個人を特定して施策を打つようなマーケティングは、旅行業界や小売業、米アマゾン・ドット・コムに代表されるECサイトや米グーグルなど大手プラットフォーマーが中心だった。
2007年ごろから大きく状況が変わった。アドテクノロジーとスマートフォンの登場である。スマホの普及によって、広告配信が可能なスクリーンの数は飛躍的に増えた。広告需要が増加。アドテクに資金が供給され、さまざまな技術革新が起こった。
アドテクは、広告取引がオークション形式で自動化され、1インプレッション単位で瞬時に取引されるということだけが本質ではない。これまで各サイトに閉じていた個人のアクセスデータを販売するデータセラーが登場し、サイト間で共有することができるようになったというのがポイントである。
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