※日経トレンディ 2019年12月号の記事を再構成
日経トレンディが選んだ「2020年ヒット予測ランキング」、2位は「嵐ロス」だ。活動休止に向けて、史上最大の応援と感謝の渦が巻き起こる。ファンクラブ会員は活動休止発表後30万人増。ツアーやアルバムなどによる一連の経済効果を3000億円と見積もる声も。
【2位】応援熱クライマックス 嵐ロス
走り抜ける5人の周りに、史上最大の応援と感謝の渦ができる
「ファンは誰も卒業しない」。アイドルグループ「嵐」の強さを一言で表すとこれに尽きるのではないか。1999年に嵐が結成されてから20年。彼らはあらゆる年齢層をとりこにし、国民的行事の顔を務め、日本最強のアイドルグループへと上り続けた。
上武大学教授で経済学者の田中秀臣氏は、嵐のビジネスについて「年輪モデル」と称している。若いときにファンになった人は年齢を重ねても残り、その周りに新たな層が次々に入ってくる。あたかも年輪のようにファン層が厚いのだ。親子どころか3世代で嵐ファンという家庭も珍しくない。
その嵐がついに“卒業”を迎える。2019年1月27日、記者会見で5人が活動休止を報告。列島に激震が走ったが、5人の説明は明快だった。活動休止は20年末。2年弱、嵐の節目までを見届ける猶予をつくったのだ。
「ファンクラブ会員は250万人以上いるといわれ、活動休止を発表してから約30万人増えている。その会費だけで15億円。既に“ニューカマー効果”が出ている」と、田中氏は言う。ファンクラブ会員が激増している理由はもちろん、入手困難な嵐のライブチケットのために会員になるのが必須だからだ。今、結成20周年を記念する全国ドームツアーの真っ最中。全50公演、総動員数237万5000人と史上最大規模。チケットとグッズ収入だけで200億円は下らない。19年6月発売のベストアルバム『5×20 All the BEST !! 1999–2019』は、9月にダブルミリオンを記録し、当然この数字は伸び続ける。こうした一連の経済効果に、2年で3000億円以上という仰天の数字を想定する専門家もいる。
ここまで巨大な成果が約束されていても、嵐は挑戦をやめない。19年10月9日、嵐のYouTube公式チャンネルが開設されたのだ。このYouTubeチャンネル上で、デビュー20周年の記念日の11月3日に、20年の活動について生配信で彼らから報告があった。すでに10月9日から定額制音楽配信サービスで5曲を配信していたが、さらに全ての過去のシングル64曲と、新曲の「Turning Up」を配信することを明らかにした。加えてTwitter、Facebook、Instagram、TikTok、Weiboの公式アカウントの開設を宣言。5月には五輪のために建設した収容人数8万人の新国立競技場でのライブ、アジアでのコンサートも発表になった。田中氏は、「ついにジャニーズのアイドルが、国際的に活躍する足掛かりとなる可能性はある」と分析する。「世界的グループの『防弾少年団』が“緩い著作権管理”で成功したように、インターネット上で音楽や映像に接触できるのは国際的成功には不可欠」(田中氏)。嵐がしかるべき期間をおいて再開を検討するとしたら、世界的知名度が背中を押すはずだ。
嵐は「NHK東京2020オリンピック・パラリンピック放送スペシャルナビゲーター」に就任している。嵐を目にする機会が爆発的に増え、我々は痛感するであろう。彼らが時代に必要とされてきたことに。コラムニストの木村隆志氏はこう言う。「かつてSMAPはオンリーワンでいいと歌ったが、今はそれすら必要なく普通がいいという時代。個性よりも仲間との絆が大事で、大学生グループのようにいつまでも仲の良い彼らに癒やされる」。日本中を癒やして鼓舞してきた彼らを、国民が応援する番だ。ここ数年高まり続ける消費のキーワード「応援熱」が20年、嵐を中心に最高潮を迎える。
国民的グループの活動休止を見届ける空前絶後のカウントダウン
CD、DVDも金字塔を打ち立てる
『BRAVE』
約1年ぶりとなる通算57枚目の最新シングル。ラグビーワールドカップ2019のイメージソング(日本テレビ系)に起用
『5×20 All the BEST!! 1999-2019』
20周年記念ベストアルバムを19年6月に発売した。デビューシングル『A・RA・SHI』を含む合計64曲を収録