プラスチックごみ問題が世界規模で喫緊の問題になっている。使い捨てない「ごみゼロ」へ、世界の企業がかじを切り始めた。その動きは2030年に7兆円のビジネスを生むと言われる。日本企業もいち早く取り組むことが求められている。プラスチックごみ問題を巡る世界の潮流と、先進企業の動きを追う。

ネスレ日本はプラスチック製パッケージを紙製に切り替えた
ネスレ日本はプラスチック製パッケージを紙製に切り替えた

 ここ最近、食品や日用品のパッケージを刷新する企業が相次いでいる。ネスレ日本(神戸市)は2019年9月下旬から、主力商品のチョコレート菓子「キットカット」の大袋タイプ5品目の外袋を、従来のプラスチック製から紙製に切り替えた。ユニリーバ・ジャパン(東京・目黒)は、8月以降発売の「ラックス」「ダヴ」「クリア」の主力3ブランドで、パッケージに最大95%の再生プラスチックを使用する。

2050年に「海洋プラごみゼロ」へ

 大手企業がパッケージの素材を相次いで変更する背景にあるのが、「海洋プラスチックごみ問題」だ。プラスチックごみが海洋汚染や生態系への悪影響を引き起こしているとして、世界で関心が高まっている。国連環境計画国際環境技術センターなどによると、1年間に約800万トンものプラスチックごみが海に流出し、その結果、例えば海の生態系に対する経済損失は毎年130億ドル(約1兆4000億円)以上に上るという。

出所/国連環境計画国際環境技術センターの資料などを基に作成
出所/国連環境計画国際環境技術センターの資料などを基に作成

 深刻化する海洋プラスチック問題の解決へ向けて、国や企業の動きが急激に加速している。先鞭(せんべん)をつけたのが、ハンバーガーチェーンの米マクドナルドとコーヒーチェーンの米スターバックスだ。世界に広く店舗を展開する両社は18年夏、プラスチック製ストローの廃止を打ち出した。その後、日本でもすかいらーくホールディングスやセブン&アイ・ホールディングスといった外食や流通大手に波及した。

米スターバックスが採用した、ストローなしでも飲みやすい新しい蓋
米スターバックスが採用した、ストローなしでも飲みやすい新しい蓋

 19年6月に大阪で開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議では、50年までにプラスチックごみによる新たな海洋汚染をゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」に合意した。プラスチックごみ削減に関する初めての国際枠組み「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」にも合意。各国が自主的な対策を実施し、進捗状況を定期的に報告、共有することが決まった。10月には、1回目の報告会が日本で開催された。

2019年6月に長野県軽井沢町で開催されたG20エネルギー・環境相会合で、海洋プラスチックごみ削減に関する国際枠組みが誕生した
2019年6月に長野県軽井沢町で開催されたG20エネルギー・環境相会合で、海洋プラスチックごみ削減に関する国際枠組みが誕生した

 ESG投資に詳しい、りそな銀行アセットマネジメント部責任投資グループグループリーダーの松原稔氏によると、海洋プラスチックごみ問題は今や「企業にとって重大な経営リスク」になっている。その影響は幅広い業界に及ぶ。ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを基に企業を格付けする米MSCIによると、「清涼飲料」「総合化学」「金属・ガラス容器」「基礎化学品」の順に影響が大きいという。

「プラスチックごみ」や「プラスチックごみリサイクル」といった用語が開示資料に含まれている企業の割合を業界別に調べた。対象は、米国の上場企業2450社が発行する年次報告書(2018年12月時点) 出所/米MSCI
「プラスチックごみ」や「プラスチックごみリサイクル」といった用語が開示資料に含まれている企業の割合を業界別に調べた。対象は、米国の上場企業2450社が発行する年次報告書(2018年12月時点) 出所/米MSCI

 MSCI日本法人の柴野幸恵シニア・アソシエイトは、「プラスチックごみ問題は以前から指摘されてきたが、ここへ来て、EU(欧州連合)の規制強化や中国のプラスチックごみの輸入禁止など、企業の財務に直接影響を及ぼす動きが出てきた」と話す。

 既に、プラスチックに対する規制は世界で広がっている。ターゲットは、パッケージやレジ袋など、使い終わるとすぐ捨てられる「シングルユース(使い捨て)」のプラスチックだ。例えば、EUは、食器やストロー、綿棒の芯などの使い捨てプラスチック製品を21年から禁止する。

 日本ではまだ規制が導入されていないが、20年4月にもレジ袋の有料化を義務付ける見込みだ。19年3月に環境省が取りまとめた「プラスチック資源循環戦略」では、使い捨てプラスチックの削減目標を盛り込んだ。

 「2030年までに容器包装など使い捨てのプラスチックを25%削減する」「2035年までに使用済みプラスチックを熱回収を含めて100%有効利用する」「2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入する」といった野心的な数値目標が並ぶ。

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