海洋プラスチックごみ問題が世界規模で喫緊の問題になっている。欧米では「Loop(ループ)」と呼ぶビジネスモデルに注目が集まる。米P&Gやスイスのネスレ、米ペプシコ、英蘭ユニリーバなどが参加するこのビジネスモデルは、容器を「使い捨てない」で販売することができる。

 世界的に関心が高まっている海洋プラスチックごみ問題の解決へ向けて、新しいビジネスモデルが登場した。シャンプーや洗剤、化粧品、清涼飲料、アイスクリームといった日用品や食品を、容器を「使い捨てない」で販売するというものだ。2019年5月、パリとニューヨークで始まった。20年には、ロンドンやトロント、サンフランシスコ、さらには東京でも展開が始まる予定だ。江崎グリコやサントリー食品インターナショナルなどが参加するとみられる。

 この注目のビジネスを展開するのは、「Loop(ループ)」と呼ぶイニシアチブである。廃棄物問題に取り組む米テラサイクルの他、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やスイスのネスレ、米ペプシコ、英蘭ユニリーバ、米モンデリーズ・インターナショナルなど、世界の大手日用品・食品メーカーが名を連ねる。

プラスチックごみの削減を実現する「Loop(ループ)」のサービス。繰り返し使えるソフトケースに入れて商品を届ける
プラスチックごみの削減を実現する「Loop(ループ)」のサービス。繰り返し使えるソフトケースに入れて商品を届ける

 サービス開始時点では、30社を超えるメーカーの約300品目がウェブサイトで買えるようになった。当面、利用者を各地域5000人に限定し、本格展開に向けて課題をあぶり出す。ループは19年1月に、政財界のリーダーが集まる世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」の場で披露された。世界経済フォーラムは、持続可能な消費モデルとしてループのビジネスを支援していく。

「牛乳配達」方式が復権

 ループの仕組みを説明しよう。ウェブサイトから商品を注文すると、通販で一般的な使い捨ての段ボール箱ではなく、繰り返し使えるソフトケースに入って届く。商品を使い終えた後の空容器は、事業者が再びソフトケースに入れて回収し、洗浄する。その後、容器をメーカーの工場へ運び、再び中身を充填して出荷する。容器は何度も繰り返し使うので、ごみが出ない。顧客は空の容器を捨てる手間が省ける。

ハーゲンダッツのループ用アイスクリーム容器は繰り返し使用できる。中身が溶けにくいように開発した
ハーゲンダッツのループ用アイスクリーム容器は繰り返し使用できる。中身が溶けにくいように開発した

 テラサイクルジャパン(東京・目黒)のアジア太平洋統括責任者のエリック・カワバタ氏は、「昔の牛乳配達のようなビジネスモデル」と説明する。輸送や洗浄にかかるコストはテラサイクルが負担し、商品を売るメーカーは販売量に応じた手数料をテラサイクルに支払う。洗浄設備などにかかるテラサイクルの投資は、数億ドルになるとみられる。

 ループでは、利用者があらかじめ買い替え期間を設定しておき、定期的に商品を届けてもらうサブスクリプション(サブスク)方式で商品を購入することもできる。例えば、いつも使っているシャンプーが大体3カ月で使い終わると分かっていれば、3カ月ごとに商品を届けてもらい、空いた容器を回収してもらうことが可能になる。利用者は買い替えのたびに注文する必要がないので、注文情報を一度セットしておけば手間や時間を減らせる。

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