特集「未来の市場をつくる100社」の3社目は“動くホテル”事業に挑むCarstay(東京・新宿)を紹介する。同社はトヨタ自動車とソフトバンクの共同出資会社モネ・テクノロジーズが発足した「MONETコンソーシアム」に参画する。同コンソーシアムは小田急電鉄、JTB、全日本空輸(ANA)といった大手企業が名を連ねる中、珍しい独立系ベンチャーだ。海外で流行中のバンで暮らす「VANLIFE」のプラットフォームを立ち上げ、2023年に「VAN泊」市場創出を狙う。
Carstayが開発するサービスは非常にユニーク。例えるならば、民泊事業の「Airbnb」、駐車場シェアリングの「akippa」、そしてレジャー・アクティビティー予約サービス「asoview!(アソビュー)」を組み合わせた事業だ。そして、そのすべてが自動車と密接に結び付いている。1つずつ詳しく解説していこう。
まず、Airbnbに当たるサービスが車中泊に特化したカーシェアリングサービス「バンシェア」だ。キャンピングカーは車中泊に使う自動車の代表例。そのほか、車中泊仕様にカスタマイズを施したトヨタの「ハイエース」なども該当する。「日本には約250万台のバンが眠っている」とCarstay代表取締役の宮下晃樹氏は試算する。この休眠状態の資産を活用した、新たな宿泊ビジネスとして車中泊に目を付けた。「車中泊は駐車に当たり、現時点では法律上の規制はない」(宮下氏)ため、バンに宿泊する車中泊、つまりVAN泊市場は民泊以上の可能性を秘めていると考えた。
矢野経済研究所によれば、18年の国内のキャンプを含む「ライトアウトドア市場」は2862億円だ。日本オートキャンプ協会は18年のキャンプ人口を850万人と発表。ネッツトヨタは車中泊人口は100万世帯と算出している。1世帯を3.5人と仮定した場合、ライトアウトドア市場における車中泊市場は、既に1200億円規模であると宮下氏は算出した。もっとも、車中泊はまだ市場とも認識されていない。Carstayはバンを活用することで、今は名もなき車中泊をVAN泊市場として世に定着させることを狙う。
海外ではVAN泊市場が先行して広がっている。きっかけとなったのは、米ファッションブランドの「ラルフ・ローレン」でデザイナーを務めていたフォスター・ハンティントン氏だ。同氏は退職後に必要なものだけをバンに詰め込んで、移動しながら働く自由気ままな生活を始めた。そうした生活を「VANLIFE(バンライフ)」と名付け、「Instagram」などに写真を投稿。その写真をまとめた写真集を発売した。これが火付け役となり、VANLIFEはムーブメントとなった。Instagramでハッシュタグ「#vanlife」を検索すると600万件を超える画像が投稿されている。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー