日経クロストレンドは国内スタートアップを対象にした「未来の市場をつくる100社」を選出した。これまでにない技術やサービスを持ち、新しい市場の創造を目指す未来のスター候補である。ただし市場が立ち上がり、消費にインパクトを与える時期には差がある。そこで、3年後、5年後、そして10年後と時間軸で分類。まずは3年後の2023年に花開く企業から紹介する。

ティフォンはVRを活用したテーマパークを東京のお台場と渋谷に展開。近日中には米国に「サンタモニカ店」を開設する予定
ティフォンはVRを活用したテーマパークを東京のお台場と渋谷に展開。近日中には米国に「サンタモニカ店」を開設する予定

 米グーグルの代名詞ともなっているスマートフォン向けOSのAndroidや動画サービスのYouTubeが、スタートアップの買収によって手に入れたものであることはよく知られている。研究開発に膨大な投資をしつつも、世界のスタートアップ動向を常に注視。買収という手段を駆使して有望な技術やサービスを次々に手に入れてきた。

 それは、「自ら新しい技術を開発するより、買収する方が効率的だからだ」。DeNAで会長を務め、現在はシリコンバレーを拠点にするベンチャーキャピタル、スクラムベンチャーズのパートナーである春田真氏は、グーグルを含む米国企業が市場創造、言い換えればイノベーションを実現できる秘密をそんな言葉で言い表す。

 実際、スタートアップが手掛ける新しい技術やサービスは、この先にどんな市場や消費トレンドが生まれるのかを知るよい羅針盤になる。そこで日経クロストレンドはスタートアップ事情に詳しい識者などに取材。その意見を加味しつつ、独自に「未来の市場をつくる100社」を選出した。これまでにない新技術やサービス開発に注力。近い将来、新たな需要と市場とをつくるキープレーヤーたりえる有望スタートアップのリストになっている。今回から、そのリストを基に3年後、5年後、そして10年後と分けて、この先にどんな市場と消費がつくられるのかを紹介していく。まずは2023年に花開く「空間エンターテインメント」という未来市場から――。

採択率わずか1%、狭き門をくぐれたワケ

 米ウォルト・ディズニー・カンパニーの新事業創出支援プログラム「ディズニーアクセラレーター」で、唯一採択をされた国内企業をご存じだろうか。VR(仮想現実)、AR(拡張現実)ベンチャーのティフォン(東京・千代田)だ。「正確な数は教えられていないが、世界各国から1000社以上の応募があったと聞いている」と同社の深澤研CEO(最高経営責任者)は言う。ディズニーは消費者向けメディア、エンターテインメント関連の有望なベンチャー企業を発掘し、育成することを狙う。採択企業はわずか1%という狭き門をティフォンはかいくぐった。

 資本出資や傘下の大手アニメ制作会社ピクサー・アニメーション・スタジオのクリエイターとの面談といった、ディズニーの後押しを受け、ティフォンが狙うのは「空間エンターテインメント」市場の創造だ。次世代通信規格5Gサービスの本格開始が迫りつつある。低遅延、多接続という5Gの特性を生かし、MR(複合現実)を活用した新しいエンターテインメントサービスを生み出そうとしている。

 ティフォンはキープレーヤーとなることを目指す空間エンターテインメントは、日経クロストレンドが命名したものだが、23年までに、グローバルで1兆円を超える規模になる可能性がある。それはVRをリアルな施設内で楽しむ「ロケーションベースVR」と呼ばれる市場が、23年にグローバルで118億ドル(約1兆3000億円)規模になるとの予測データがあるからだ(VR、AR専門調査会社の米グリーンライト・インサイツによる。空間エンターテインメントはロケーションベースVRよりも広い概念。市場規模も大きくなる見込み)。こうした理由から、「未来の市場をつくる100社」にふさわしい1社と判断した。

「空間エンタテインメント」市場の有望企業ティフォンの概要
「空間エンタテインメント」市場の有望企業ティフォンの概要

 新市場の実現に欠かせない5Gインフラの整備に先駆けて、ティフォンは映像を活用した新体験の技術開発やノウハウをためるために、VRやARを活用した施設を展開中だ。東京のお台場や渋谷で、VRテーマパーク「ティフォニウム」を運営している。近日中には米国1号店の「サンタモニカ店」をオープンさせ、米国に進出する計画だ。

 VRを活用したテーマパークや、アミューズメント施設は大小問わず、さまざまな企業が参入している。大手では、セガ エンタテインメントが手掛けるVRを活用したゲーム施設「SEGA VR AREA」などが知られる。一方、ティフォンが手掛ける施設はゲーム性よりもストーリーを重視したシアターに近い。美しい映像を楽しみながら、まるで自分がその世界に入り込んだような体験を提供する。ティフォンが目指すのは「記憶に残る魔法のような体験」だ。その実現のため、VRにARを組み合わせた技術を独自開発した。同社ではこれを「マジックリアリティー」と呼んでいる。

VRの世界に入り込んだ感覚を味わえる独自技術

 ティフォンのテーマパークは、いずれもVRゴーグルを身に着けてCGで作られた世界を冒険する。アトラクションは複数あり「コリドール」は廃虚となった洋館からランタン1つで脱出するホラーアトラクション。「フラクタス」は船を操作して、異世界を航海するファンタジーアトラクションだ。CGでつくられたこうした世界に、まるで自分自身が入り込んだような体験を味わえるのがマジックリアリティーだ。入園料はアトラクションごとに異なり、1800~2400円となる。

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