CASE、MaaSへの対応が迫られるなか、自動車メーカーや交通事業者の意識が大きく変わりつつある。「CEATEC 2019」の基調講演にはタクシー業界の若き経営者・川鍋一朗氏が登壇し、「第46回 東京モーターショー 2019」ではMaaS時代のラストワンマイルを担う超小型モビリティが存在感を見せていた。2つの大規模展示会から、日本のモビリティの将来像を占った。
2019年10月15日から4日間にわたって、千葉市の幕張メッセで開催されたITとエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC 2019」。初日の基調講演に登壇したのは、「タクシー王子」の異名を持つ川鍋一朗氏だった。タクシー最大手の日本交通(東京・千代田)の会長であり、タクシー配車アプリ「JapanTaxi」を運営するJapanTaxi(東京・千代田)を立ち上げて社長を務める川鍋氏は、「タクシーは将来、ラストワンマイルのライフラインになる」と改めて宣言した。
さまざまな交通手段が融合し、シームレスに使えるようになるMaaSで欠かせないのが、鉄道の駅やバス停から目的地までの移動手段「ラストワンマイル」。現状では、この部分を担う有力な公共交通手段がないため、地方部を中心にマイカー社会となっている。しかし、高齢ドライバーの運転ミスが社会問題になるなど、マイカーに頼るのは難しくなりつつある。そこでタクシーの出番、というのが川鍋氏のビジョンだ。
川鍋氏は全国のバス路線の8割が赤字になっていることを指摘し、移動の密度を上げなければ移動にかかる社会的なコストが賄えないとした。そこで提案するのが、バスとタクシーの中間に位置する、乗り合い型の移動手段。20年度にも相乗り型のタクシーが解禁される見込みで、「そもそも、タクシーの事業免許では最大10人まで利用者を乗せられることになっている」(川鍋氏)。タクシーの輸送効率を上げれば、運送業界全体で課題となっているドライバー不足を解消できると話す。
もちろん、1人の客を目的地に直接送り届ける従来のタクシーとは運行方法を変える必要がある。ユーザーの移動ルートと、そのために最適なクルマをマッチングさせるには、AI技術を活用した配車アプリが不可欠。さらに、クルマの中に電動キックボードなどの超小型モビリティを搭載しておくことで、最終目的地までのラストワンマイルを担わせることができるという。加えて、宅配便や郵便物、移動販売の機能なども搭載する。人だけでなくモノの移動も一体化することで、地域の生活を支える存在になるという壮大なビジョンを掲げた。
既にそのピースはそろいつつある。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー