大阪最後の一等地「うめきた2期」。目指すはイノベーションが起こる“場”だという。健康や食、環境など多様な価値を交換しあう場となり、その底流には個人やIoT機器などのデータが行き交う。この事業のアドバイザー、慶応大学医学部の宮田裕章教授へのインタビュー後編をお届けする。

(インタビュー前編からご覧になる方はこちらから)

慶応大学医学部教授の宮田裕章(みやた・ひろあき)氏。医療政策・管理学教室、ビッグデータ・社会デザインが専門。データ駆動型社会によるヘルスケア改革に取り組んでいる。厚生労働省の有識者会合のメンバーも務める
慶応大学医学部教授の宮田裕章(みやた・ひろあき)氏。医療政策・管理学教室、ビッグデータ・社会デザインが専門。データ駆動型社会によるヘルスケア改革に取り組んでいる。厚生労働省の有識者会合のメンバーも務める

データ駆動型社会の実現に向けた具体的な取り組みとして、「うめきた2期事業」が重要になるとお聞きしました。大阪最後の一等地とも言われるエリアの再開発で、大阪駅北側の貨物駅跡の事業ですね。

三菱地所や阪急電鉄などが参加する大きなプロジェクトで、私はそのアドバイザーをしています。ここで、新たな価値を共創する未来社会のフラッグシップモデルを実現すべく、各社と議論を重ねています。

うめきた2期で実現する社内のイメージ図。超スマート社会が到来する中、IoTやビッグデータなどの活用により、創薬や医療機器開発などの分野にとどまらず、人々が健康で豊かに生きるための新しい製品・サービスを創出するという(慶応大学医学部医療政策・管理学教室の資料を基に作成)
うめきた2期で実現する社内のイメージ図。超スマート社会が到来する中、IoTやビッグデータなどの活用により、創薬や医療機器開発などの分野にとどまらず、人々が健康で豊かに生きるための新しい製品・サービスを創出するという(慶応大学医学部医療政策・管理学教室の資料を基に作成)

 いま、日本ではキャッシュレス化の動きが激しい。ただどうしても、データ・フォー・マネーの陣取り合戦が先行している面が否めません。中国の信用スコアも、ある側面からの価値の最大化という国家主導による限界があります、もっと多面的な活用法を、うめきた2期は推進できると考えます。

IoT×健康を1つのキーワードに

 ライフデザイン・イノベーションとして、IoT×健康をキーワードに人々が健康で豊かに生きるための新製品や新サービスを創出する場にしていく。データに共有財あるいは公共財としての側面も持たせて、コミュニティーでその活用を考えていく。どのように働き、何を食べ、何を着て、どのように遊ぶか、これら全ては世界に影響を与えています。「食べる」という行動一つとっても、単においしくて幸せというだけでなく、その地域の地産地消にどのように貢献しているか、環境負荷の高い食材や製造工程を経ていないか、本人の健康を考えたときに、その時その人に必要な栄養を過不足なく提供するものか、など持続可能性の様々な軸があります。

 シェアードバリューは信用という一元的なものでなく、環境や教育・学習、食、健康、ダイバーシティーなど多元的な軸があります。そしてデータを活用することで持続可能な共有価値への影響や貢献を可視化することができます。例えばレジ袋をもらわなかった人には環境ポイントを還元して、環境サステナブルをキーワードとした新たなサービスが出来上がったとき、それを優先的に提供する。コミュニティーに参加するなどして新たな価値を体験してもらう。

 もちろん容器の持ち込みや、商品の選び方など、環境に貢献する方法は様々です。どのようなスタイルを貢献価値として設定するかは、コミュニティーの判断次第ですし、これは地域によって違ってもよいものだと思います。このようなコミュニティーは環境だけでなく、スポーツ、食、教育・学習、健康など、多層的に必要だと考えています。

 参加型コミュニティーを活用した都市づくりは、既にコペンハーゲンなどで行われていますが、多元的な軸でデータを活用することにより、人々がより輝く場を模索していくことができればと考えています。2025年の大阪・関西万博のテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」ですので、こういった場とも連携できればよいですね。健康や医療分野における人工知能(AI)や仮想現実(VR)など先端技術の発展を紹介するだけでなく、新しい社会ビジョンの中で“いのちが輝く”様々な可能性を世界と共有することができればよいのではないでしょうか。こういった観点からも、2024年に開業するうめきた2期は、持続可能な社会を実現していくための大切なエリアになると思います。

「ポケモンGO」で健康の概念を変える

健康という概念も多様化しているのでしょうか。

健康は人生を幸せに生きる手段だと思います。生きるという意味が多様化、多元化している現代において、その人にとって必要な健康も異なります。そんな中、歩く、動くという点に注目した米ナイアンティックの「ポケモンGO」とのコラボレーションを進めています。たかがゲームと思われるかもしれませんが、世界で10億人を自然と歩かせる、健康にさせる“ツール”と見れば、楽しさの先にある健康という意味でとても興味深い。

個人データ流通について宮田先生は、「PeOPLe(Person centered Open Platform for well-being)」という構想を打ち出しています。その中でプライバシーはどう位置づけられますか。

データは「個人を軸にしながらオープンに活用する」という手法がよいと思います。一極集中で誰かが管理した場合、その“神”のような存在を誰にするかでまた議論が必要になる。分散管理で、必要なときにつなぐという考え方がよいと考えます。企業などがそのデータへアクセスしたときはそのアクセスログを残し、オプトアウト(適用除外)も設けておく。

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