※日経エンタテインメント! 2019年10月号の記事を再構成
タレント「SNSパワー」ランキングの最終回は、中国活動に力を入れるタレントが、次々とアカウントを開設する中国のSNS「Weibo(ウェイボー)」を紹介する。開設の目的は、情報発信だけではない。「Weibo」のサポートとネットワークは、タレントたちの中国での活動のチャンスももたらしている。
2018年6月に山下智久、同年12月には木村拓哉がアカウントを開設。19年8月には、20年デビュー予定のSnow Manも…。これまでSNSを利用しなかったジャニーズ事務所所属タレントがアカウントを開設して大きな話題を集めるのが、中国のSNS「Weibo(ウェイボー)」だ。Weiboとは、短文と動画、写真が投稿できる“中国版ツイッター”とも言われるサービス。ユーザー数は約8億人で、その約8割を占める中国本土を中心に、世界中に広がっている。日間アクティブユーザー数は2億人以上だ。
タレントが、海外進出を考える際、SNSはなくてはならないツールの1つ。これまでも音楽系アーティストは、フェイスブックやツイッターなどを積極的に利用してきた。だが、ここに来て俳優も海外での基盤づくりとして、Weiboを活用し始めている。19年4月に山﨑賢人、7月に菅田将暉、8月に竹内涼真など、若手トップの進出も続いている。
背景には近年、アジアを中心に、日本製作の配信ドラマが放映される機会が増えたことがある。なかでも最も市場も大きいのが中国。しかし、同国ではツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどの利用が制限されている。そのため、中国市場と接点をつかむ場合、Weiboのような中国企業が運営するSNSの利用が不可欠となるのだ。
まめに投稿する木村拓哉
Weiboを運営する「微博」中国本社の日本窓口を担当する「微博日本」は、16年頃に始動した。同社のマーケティング プロモーションのディレクター田中里枝氏は、「以前は当社側から各芸能事務所等にWeiboの開設を勧めることが多かったのですが、最近は逆に事務所から相談を受けることが増えました」と話す。
編集部が独自に日本のタレントを調べたところ、最多フォロワー数は、12年にアカウントを開設した福山雅治で534万4819人。13年からスタートした三浦春馬と古川雄輝が、それぞれ376万6508人、339万456人と、Weibo歴の長い俳優が上位を占めた。彼らに共通するのは、中国作品への主演経験だ。福山は『マンハント』(日本公開18年)、三浦は『真夜中の五分前』(14年)、古川もYouTube限定公開作品『我愛你 in TOKYO』(14年)で主演を務めている。前述の山下(フォロワー数172万3176人)と木村(同161万3113人)も、それぞれ『サイバーミッション』(19年)、『2046』(04年)で、中国映画への出演経験がある。
一方、菅田将暉が40万6525人、山﨑賢人も33万4019人などと、中国作品への出演経験がない俳優もWeibo開設からまたたく間にフォロワーを集めた。その背景には、中国内でも日本のエンタテインメント情報がほぼリアルタイムで入手できる環境がある。「日本のドラマが好きな中国のファンは動画サイトなどにアクセスするため、日本で今人気の俳優をよく知っています。彼らの情報をさらに知るべく、Weiboをフォローするのです」(田中氏、以下同)。
Weiboでは、どのような投稿が人気を集めるのか。田中氏によるとポイントは2つ。それは、他のSNSでは見られない“Weiboだけ”の内容と、中国語での投稿だ。「翻訳機を使った直訳の拙い中国語で構わないんです。ぎこちない表現のほうが、現地のファンは『本人が書いている』と喜んでくれるし、コメント欄でも『こういう中国語のほうが自然だよ』などの投稿で盛り上がり、親密度も上がります。当社で中国語の投稿のサポートする際も、あえて直訳っぽさを残すようにします」。
木村拓哉は、頻繁に中国語で投稿する1人。投稿ごとに3万~4万もの「いいね」が付き、3000前後のコメントが寄せられる。木村は中国語圏の友人との交流も盛り込み、中国ファンとの親近感を高めている。
映画『兄に愛されすぎて困ってます』(17年)で、中国で人気が出たGENERATIONSの片寄涼太も、Weiboで205万5560人のフォロワーを持つ。投稿は、インスタグラムとは別のオフショットが多く、2万前後の「いいね」を獲得。中国で大学統一入学試験が始まった6月7日は、「受験者の皆さんGood Luck」と、「逢考必(試験に必ず合格)」と書かれた自撮り写真を添えて投稿し、中国での出来事にも関心を持つ姿をアピールした。
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