生活者から個人情報を預かり、管理・統合して企業に提供することで利益を得るビジネスとして動き始めたのが「情報銀行」だ。マイデータ・インテリジェンス(MDI)はさらに先を見据え、企業間同士のデータ連携がどこまで可能かを研究し、企業間で個人情報をエクスチェンジ(交換)するハブも目指している。

「情報銀行トライアル企画」の情報フロー。PD=パーソナルデータ(マイデータ・インテリジェンスのサイトより)
「情報銀行トライアル企画」の情報フロー。PD=パーソナルデータ(マイデータ・インテリジェンスのサイトより)

 電通グループのマイデータ・インテリジェンス(MDI)は2019年7月から、「情報銀行トライアル企画」をスタートさせた。

 情報銀行は、さまざまなデータから個人の信用を測り、スコアという数値に加工する「個人信用スコア」や、主に個人の行動に基づいて信用を創出する新しい「後払い」とは異なる。個人から許諾を得たうえで、個人についてより精緻なデータを収集し、それらを企業に生データとしても提供できる。近い将来、企業が個人情報を生かしたビジネスを進めるうえで、重要な機能を担うと見込まれている存在だ。日本IT団体連盟による公的な認定制度もあり、MDIもその認定を申請中。先に認定された三井住友信託銀行、フェリカポケットマーケティング(東京・港)に続き、「年内には認定されると見込んでいる」(MDI取締役執行役員COOの森田弘昭氏)という。

 MDIが始めた情報銀行トライアル企画は、こうした情報銀行の認定に先立って実務を進め、実際にどんな使途やどの程度の対価を示せば、消費者から許諾を得て、ビジネスの拡大に必要な個人情報を収集できるかを確認。そのうえで個人情報データを幅広く収集し、かつそのデータの利活用法を見極めるという狙いがある。MDIが先行して実務を進めることで、消費者に対しても、個人情報を利活用したい企業に対しても、情報銀行というビジネスがどのようなものか広く認知してもらえるという意味もある。

 具体的には、約1万2000人の一般生活者をモニターにして個人情報を預かり、参加企業10社と共に個人情報の利活用の効果を測るというもの。生活者の許諾の下でMDIが個人情報を収集、管理して参加企業に提供していく。

 トライアル期間は19年7月3日~12月31日まで。取り扱う個人情報は許諾を得たもので、パーソナルな基本情報の他、興味のカテゴリー、好きなもの、位置情報や購買履歴、移動や行動履歴、アンケート調査による回答情報など多岐にわたる。取得する個人情報は、利活用の目的を明示したうえで許諾を得た場合のみしか使わない。モニターは、提供を許諾すれば、参加企業から対価(サービスや商品・金銭など)を受け取れる。

 事前公募にて登録したモニターは、自分の個人情報を管理・活用できる機能を内蔵したMDIのサービス「MEY」を利用できる。MEYでは、企業から個人情報の利活用のオファーを受けると、目的や対価を確認し、気に入ったオファーだけに個人情報の一部を提供。一度、許諾したオファーでも取り消すことは可能だ。万全なセキュリティーも構築し、個人情報の利活用の安全性を高めた。一方、参加企業はモニターから許諾を得た個人情報の提供を受けることで、精緻なデータを収集できる。参加企業のマーケティング活動や製品・サービス開発につなげることが可能だ。

 今回の参加企業は、キリンホールディングス、パーソルキャリア、「メガネスーパー」を運営するビジョナリーホールディングス、明治安田生命保険、サイバー・コミュニケーションズが運営するマーケティングコンサルティングのDataCurrentの他、金融やエネルギー関連、旅行・観光、電通マクロミルインサイトの9社とMDIを加えた10社。各社が設定するテーマに沿って、個人情報の利活用によって何ができるのかを探っていく。

 例えば、キリンホールディングスが、最近の健康意識の高まりを踏まえ、消費者の食生活と食事に合わせてどんな飲料を飲んでいるかを知りたいと考えた場合、一定の条件でターゲティングしたモニターに対し、1週間の食事とその時に飲んだ飲料の画像の提供を、MEYを通じてオファーする。同時に、オファーを受諾して情報提供を許諾してくれたモニターに対し、モニターの購買行動に即したおすすめの「健康食品」や、モニターの健康状態に適したライフスタイルとそのスタイルを実現するための「健康サービス」などを、便益(対価)として提供するのだ。

MDIのサービス「MEY」の画面。生活者は企業からのオファーごとに、利便性を勘案しながら許諾を出せるようにしたのが大きな特徴だ
MDIのサービス「MEY」の画面。生活者は企業からのオファーごとに、利便性を勘案しながら許諾を出せるようにしたのが大きな特徴だ
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