個人の信用全般を測る”総合型”ではなく、用途を限定した信用スコアとして、働きたい個人と求人企業をつなぐワークシェアリングサービスでの活用が検討されている。信用スコアをベースに、働く前に給料を支払う「前払い」サービスの構想もある。その狙いとは?
応募や面接なしで、最短1時間からすぐに働いてすぐにお金を得られる――。こんなユニークな単発アルバイトのマッチングサービスを展開するスタートアップが、タイミー(東京・渋谷)だ。アルバイトの急な欠勤や業務の集中などで、「この日、この時間だけ働いてほしい」という事業者と、空いた時間を使って効率よくお金を得たいワーカーのニーズをうまく取り込み、急成長している。
2018年8月のサービス開始以来、登録ワーカーは10万人を超え、うち約半数が18歳以上の学生、残りは主婦やフリーターが占める。また、タイミーを利用する求人企業は約7割が飲食系となっており、大戸屋や串カツ田中、ダイナックといった大手チェーンを含め、首都圏を中心に全体で2500店舗に拡大。現在、仕事依頼の確定までは平均3時間、最短8秒というスピード感で、マッチング率は実に90%に達するという。
その秘訣は、求人に対するスキルのミスマッチを防ぐ仕組みにある。求人企業は「飲食店経験1年以上」など必要なスキルを登録しておき、ワーカーは案件のマッチング時にそのスキルがあるかどうかを自己申告する。また、アルバイトが終了した後、ワーカーと求人企業の間で相互評価(Good、Badの2択とレビュー)を行う仕組みも備える。ワーカー側からは、募集内容と実際の内容に違いがなかったか、仕事が時間通りに終わったか、再びこの店舗で働きたいかといった項目で評価。求人企業からは、ワーカーが募集項目に対して十分なスキルを有していたかなどを評価している。
「あくまで性善説に立った設計だが、基本的にワーカーも求人企業も嘘を付けない仕組み。質の悪いワーカーは働けなくなり、労働環境の悪い店舗は次第に人が集まらなくなる。反対に、優れたワーカーや店舗にとっては良い循環が生まれる」(タイミー社長の小川嶺氏)
そんなタイミーのプラットフォームを使って、これまでのべ数万人が単発アルバイトに従事している。このベースとなる知見を活用して同社が乗り出すのが、ワーカーと求人企業双方の信頼度を示す、求人に用途を限定した信用スコアの展開だ。
「AIスコア」を展開するJ.Score(東京・港)や「LINE Score」を始めたLINE Creditなどが目指すのは、個人の信用全般を測ろうとする”総合型”個人信用スコアだ。利用者の許諾を得たうえで個人信用スコアを算出し、ビジネス拡大につなげるだけでなく、より詳細な個人情報を幅広く収集するという隠れた狙いもあるからだ。
これに対し、タイミーやテーブルチェック(東京・中央)は、求人や飲食店利用のように、用途を限定することでスコアの精度を上げることを目指している(関連記事「一見さんでも常連客扱いに 飲食店の『来客格付』は花開く?」)。
ゲーム感覚で信用の“レベル上げ”
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