「Yahoo!スコア」開始時のヤフーの姿勢に批判が集まるなど、個人情報を保護する流れが強まる一方、個人情報をビジネスに生かしたいという企業のニーズも高まっている。では、個人情報の保護と両立するどんな仕組みがあり得るのか──。個人信用スコア、情報銀行、新しい「後払い」など、新たな取り組みが既に始まっている。

個人信用スコア事業で先陣を切ったJ.ScoreのWebサイト
個人信用スコア事業で先陣を切ったJ.ScoreのWebサイト

 「保有するビッグデータから『Yahoo!スコア』を開発し、7月1日から他企業への提供も開始する」──。2019年6月3日にヤフーがこう発表した途端、ネット上で大きな批判を浴びた。

 Yahoo!スコアとは、ヤフーが提供するサービスを利用した頻度や、ネット通販やネットオークションで取引した金額など、4つのカテゴリーの情報をYahoo!JAPAN IDにひも付けて収集し、消費者個人の「信用」を独自のアルゴリズムで測ってスコア化するものだ。

 ネット上で大きな批判を浴びたのは、ヤフー会員は初期設定でこのYahoo!スコアが作成される仕様になっていたからだ。「黙っていたら作成しますよ。それが嫌だったら申し出てください」という、いわゆるオプトアウト方式である。しかも、スコアの数値は当事者であるヤフー会員自身にも開示されない仕組みになっていた。

 このところ、主にオプトアウト方式で取得した属性やネット上の行動履歴といった個人情報を活用することで、利用者に内実を知らせないまま、莫大な収益を稼いできた「GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)」に代表される米プラットフォーム企業に対して、世界中で批判が高まっている。その結果、消費者の個人情報を保護し、消費者自らが個人情報を管理できるようにしようという動きが世界中で強まっている。例えば欧州ではEU(欧州連合)がGDPR(一般データ保護規則)を制定したし、日本でも個人情報保護法をこの方向で改正する流れになっているのだ。

 にもかかわらず、ヤフーがYahoo!スコア開始に当たって当初取った行いは、昨今の個人情報保護の流れを軽視した、あまりに軽率な選択であったと言っていいだろう。結局、ヤフーは19年10月1日から、Yahoo!スコアが作成されない仕様に初期設定を変更し、作成されたスコアの数値も、19年中には会員がWeb上で確認できるように、仕組みを変えざるを得なくなった。

まず個人向けローンに取り組む信用スコア事業者

 ヤフーが“流れ”を見誤った背景には、より多くの個人情報を収集したいというヤフー自身の思惑に加え、消費者の個人情報を利用してビジネスの一層の伸長を図りたいという、少なくない一般企業の強いニーズがある。実際、昨今の個人情報保護の流れを受け止めつつ、こうしたニーズに応えようとする動きが、日本でも既に始まっているのだ。

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