若年層へキャッシュレス決済を浸透させる上で、日本がこれまで取り組んでこなかった「お金の教育」の重要性が高まっている。しかしながら教育現場で児童や生徒に対して正しい形で啓発を行うには、学校のキャッシュレス化を推進し、教師も十分な知識を持つ必要がある。そんな中で、スポーツ強豪校で“イチフナ”として知られる千葉県船橋市立船橋高校は、生徒と教師が一緒になってキャッシュレスの価値と怖さを学ぼうと試みている。

千葉県船橋市立船橋高校は、初めて文化祭でキャッシュレス決済を導入した。同校では、文化祭への導入を決めた学校は全国初ではないかとしている
千葉県船橋市立船橋高校は、初めて文化祭でキャッシュレス決済を導入した。同校では、文化祭への導入を決めた学校は全国初ではないかとしている

 「お支払いは現金ですか? それともPayPayですか?」

 おそろいの緑の法被を身にまとった女子高生たちは、商業科が出した模擬店でにこやかに客に話しかけていた。ここは、“イチフナ”の愛称で知られる千葉県船橋市立船橋高校。サッカーや野球の強豪としても全国に名をとどろかせる同校は2019年9月、文化祭で初めてキャッシュレス決済を導入した。

 「お金を数える手間が省けるので、スムーズに会計が進んだ」。会計を担当した商業科1年生の大渕みやびさんと屋代咲桜さんは、販売する側の立場に立ってみて、キャッシュレス決済の手軽さと将来性の高さを肌で実感したという。

PayPayで自分たちが開発した商品を販売

 商業科では1学年2学級(80人)が、会計分野では簿記や財務会計、ビジネス情報分野では情報処理など19の専門科目を学んでいる。インスタグラムに公式アカウントを開設するほか、2019年6月には公式YouTubeチャンネルでの情報発信をスタート。SNSの駆使など新しいことに積極的に挑戦し、地場の経済圏との結びつきを強めている。

 文化祭でキャッシュレス決済に挑戦したのは、教育現場でもいち早く最新ツールに触れる機会を作る意義は大きいと判断したためだ。商業科の青野哲人教諭は、「特に増税という商業に関わる大きな動きが10月にあった。キャッシュレスを先取りする良いタイミングであり、マーケティング授業の一環に取り入れるべきだと捉えた」という。

PayPayで購入できたのは、商業科が開発した「令和元年度版市船キティクリアファイル」(左)と「市立船橋アスリートウォーター」(右)の2つ
PayPayで購入できたのは、商業科が開発した「令和元年度版市船キティクリアファイル」(左)と「市立船橋アスリートウォーター」(右)の2つ

 今回採用した決済サービスは「PayPay」だ。きっかけは青野教諭が、県内の商業科の教諭向けの研修会で運営会社のPayPay(東京・千代田)の担当者の話を聞いたことだった。生徒たちにもぜひ学んでほしいと考え、文化祭での導入を前提に、商業科全員を対象にしたキャッシュレス決済に関する特別授業をしてほしいと直接お願いして実現した。

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