eスポーツの立ち上がりに呼応するように、これとはやや文脈が異なるゲームイベントも参加者を増やしている。「LANパーティー」と呼ばれる交流会とゲームセンターを舞台にしたアーケードゲーム大会だ。核になるのはゲームのコアユーザーだが、そこにも一部企業が注目し始めている。
「eスポーツ」という言葉が一般に広く認識されるようになったのはこの1、2年のこと。だがそれ以前から、ユーザー同士が腕を競い合う対戦ゲームは人気が高く、大小の対戦会や交流会が行われてきた。同じゲームの愛好家が集まり、一緒にプレーしたり勝敗を競ったり。それらには、ゲームメーカーなどのIPホルダーやイベント運営会社が主導する近年のeスポーツイベントとは違い、ゲームファンたちの自主的なコミュニティーをベースにするものが多い。
昨今のeスポーツブームの影響なのか、こうしたいわば“草の根”のゲームイベントも拡大の兆しを見せている。
機器を自分で持ち込むLANパーティー
代表例の1つが「LANパーティー」だ。LANパーティーとは、参加者自身が手持ちのPCやゲーム機などを持ち寄り、思い思いにゲームを楽しむもの。もともとはPCゲームが盛んな海外の文化で、ゲームと言えば家庭用ゲーム機が中心だった日本ではあまりなじみがなかったが、家庭用ゲーム機のネットワーク対応、PCゲームユーザーの増加などを受けて徐々に増え始めた。
中でも日本最大級のLANパーティーが、2016年から開催されている「C4 LAN」だ。3日間の開催期間中、ひたすらゲームをプレーしたり普段はネット越しに対戦している友人との交流を楽しんだりする。ゲーム機器を持ち込むために必要な座席付きチケットの販売数は、初期は140席分だったが、18年5月には360席分に拡大。座席なしで来場する人も含めると入場者数は1200人を超えた。年齢層も20代後半から30代が中心だったのが、最近は10代、20代前半の若い世代も増えているという。
予選は地方のゲーセンが舞台
アーケードゲームの世界も活発化している。アーケードゲームとは、ゲームセンターに置いてあるゲームきょう体のこと。今ほど個人がゲームを持っていなかった頃、あるいはインターネットがなく、自宅で手軽に対戦ゲームができなかった頃、ゲーマーが集まる場といえばゲームセンターだった。店舗で顔なじみになったプレーヤー同士で対戦したり、強いプレーヤーがいると噂の店舗まで遠征に行ったりしたという話も聞く。
タイトーが主催するゲーム大会「闘神祭」は、それをメーカーサイドから仕掛けたものだ。全国のゲームセンターで地区ごとの予選を開催。勝ち抜いたプレーヤーが決勝大会に集い、ナンバーワンを決める。20年に行われる大会では『ストリートファイターV タイプアーケード』の米国予選を実施。さらに、競技タイトルとして、従来の格闘ゲームやレーシングゲームに加え、『太鼓の達人 グリーンVer.』などの音楽ゲーム、『テトリス ジ・アブソリュート ザ・グランドマスター2 PLUS』というパズルゲームの部門も設けた。タイトーはこれらの大会を、eスポーツと区別して「e-ARCADE SPORTS」(eアーケードスポーツ)と呼んでいる。
ユーザーの“濃さ”に日清などが共感
これらイベントに共通するのは、核にユーザー主導のゲームコミュニティーがあること、しかも参加者たちが会場に足を運ぶオフラインイベントとして成り立っていることだ。似たような嗜好や関心事を持つ年齢も性別も異なる人たちが、一堂に会して共に楽しむ。プロゲーマーをはじめとした上級者たちのプレーを観戦するeスポーツゲームとはまた違った文化だ。
eスポーツに比べるとまだ少ないが、協賛する企業も出てきた。「C4 LAN 2019 SPRING」のスポンサーには、PC専門店「ドスパラ」を運営するサードウェーブ(東京・千代田)やPCおよびパーツ販売のサイコム(埼玉県八潮市)、アイ・オー・データ機器などが並ぶ。協賛ともなると、参加者との親和性からPCやゲームの周辺メーカーが中心になるが、その一方で、日清食品やテーブルマーク(東京・中央)、岩手県などがサポーターとして協力しているのが興味深い。日清食品ホールディングスのブランド戦略室 グローバルスポーツマーケティングディレクターの平川邦夫氏は「参加者には自分たちは持っていない熱がある。そこが面白くて協力した」という。
こうしたイベントは、ゲームメーカーなどが主導するeスポーツイベントに比べると参加者の人数が少ないものの、熱量が高いという特徴がある。その分、“共に参加した”協賛・協力企業に対してポジティブな印象を持つ人も多い。eスポーツに次ぐ消費者との接点として、今後注目される可能性を秘めている。
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