ロングセラーがいかに逆境を跳ね返してきたか、その秘訣を探る特集。第4回はぺんてるのシャープペンシル「スマッシュ」。100円で買えるシャープペンが席巻する中、1本1000円するスマッシュは廃番の危機に。ところが5年ほど前にSNSで注目を浴び、人気が復活。これを機にブランディングを急ぐ。
「スマッシュ」は1987年にぺんてるが発売したロングセラーのシャープペンシル。もともとは86年に発売した同社の製図用シャープペン「グラフ1000」の機構を受け継いだ一般向けシャープペンとして開発された。1本1000円という高価格にもかかわらず、発売当初は人気を集め、一時は「0.3mm」「0.5mm」「0.7mm」「0.9mm」の4種類に加え、同デザインのボールペンもラインアップしていた。しかし、人気のピークを過ぎると、0.5mmを残して廃番となった。
ところがここ数年、その書き心地や見た目の格好良さがSNSで話題となり、金属とゴムのメカニカルな外観が男子中高生を中心に再評価された。2014年には人気ユーチューバーが投稿したレビュー動画にアクセスが集まり、1本1000円という、シャープペンとしては今でも高価な商品でありながら、同年のアマゾン年間ランキングでは筆記用具で1位、文房具・オフィス用品全体でも2位となる爆発的ヒットを記録。
14年度の出荷本数は、10年前と比べて約228倍。その後も人気は衰えを知らず、18年には14年の7倍以上を出荷した。この人気の高まりで、廃番となっていた0.3mmを復刻してほしいという声が多く寄せられたことから、19年3月23日に復刻発売した。
一時は廃番寸前に
「10年から11年くらいがスマッシュの売り上げの底だった」
ぺんてる国内営業本部マーケティング部プロダクトマーケティング課の飯塚愛美氏はこう振り返る。取り寄せ注文をしてでも使い続ける根強いファンはいたものの、一般の店頭にはほぼ並ばなかった。韓国では一定数量がコンスタントに売れており、その輸出でなんとか命脈を保っている状態だった。
しかし、国内では08、09年ごろにブリスターパック仕様のパッケージが廃止される。同社のシャープペンは、スーパーやコンビニなど量販店向けに1本ずつ包装したブリスターパックと、文具店などでバラ売りするための複数本入った箱入りという2つの流通パッケージを用意している。ブリスターパックが廃止になれば、次に待っているのは総合カタログ落ち、そして廃番というのがお決まりのコースだ。
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