2019年5月、国賓として来日した米国のトランプ大統領が宿泊した「パレスホテル東京」。特集の第4回は、海外に強固な顧客基盤がなく、国内にも有力な系列ホテルを持たない独立系ホテルが、日本を代表するラグジュアリーホテルにのし上がった背景に迫る。ポイントは、訪日客に合わせた接客スタイルと、女性客の取り込みにあった。

東京・丸の内に立地する「パレスホテル東京」。2012年の建て替えオープン後、日本を代表するラグジュアリーホテルとしての地位を築き上げた(写真提供/パレスホテル)
東京・丸の内に立地する「パレスホテル東京」。2012年の建て替えオープン後、日本を代表するラグジュアリーホテルとしての地位を築き上げた(写真提供/パレスホテル)

 日本を代表するラグジュアリーホテルはどこか。日本人の多くは、その伝統と格式の高さから「帝国ホテル」と答えるかもしれない。しかし、海外からの評価は異なるようだ。世界的なトラベルガイド「フォーブス・トラベルガイド」は、2015年から東京のホテル格付けを発表。16年から4年連続で最高の5つ星を獲得している唯一の日系ホテルが「パレスホテル東京」だ。しかも19年は、その中でも特に優れたホテルを表彰する「2019 Verified List」にも選出。世界でトップクラスのホテル41施設の1つにノミネートされている。19年5月に国賓として来日した米国のドナルド・トランプ大統領が宿泊したことでも話題を呼んだ。

 東京・丸の内の堀端にたたずむパレスホテル東京は、1961年に開業した老舗のシティーホテル。しかし、東京を代表する高級ホテルとしては、帝国ホテル、ホテルオークラ東京、ホテルニューオータニが“御三家”と称され、パレスホテルの評価はそこまで高くなかった。

 大きく変わったのは、老朽化のため09年に一旦休業し、全面的に建て替えて2012年に再オープンしてから。全室が45平方メートル以上、皇居ビューになり、多くの客室にバルコニーを設けた。そのぶん、客室数は建て替え前より約100室も少ない290室となったが、客室単価のアップでカバー。19年上半期のADR(平均客室単価)は約6万2000円と、都内屈指のラグジュアリーホテルに生まれ変わった。

45平方メートルの「デラックス」の多くにはバルコニーが備わる(写真提供/パレスホテル)
45平方メートルの「デラックス」の多くにはバルコニーが備わる(写真提供/パレスホテル)

独立系ホテルでも訪日客は獲得できる

 パレスホテルの躍進をけん引しているのは、訪日外国人客とレジャー需要の開拓だ。

 現在のインバウンド比率はおよそ7割。「ラグジュアリーホテルとして、欧米を中心とした営業戦略を取っている」と、建て替えプロジェクトから関わってきた渡部勝総支配人は言う。国と地域別では、米国、中国、フランス、英国、香港の順で、欧米中心ながらも最近はアジアの富裕層も多く宿泊するようになってきている。

 世界中の独立系ラグジュアリーホテルが集まる「ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド」には加盟しているが、国外の旅行会社との営業代行などが中心で、外資系ホテルのような強固な顧客基盤があるわけではない。これに対して渡部氏は、「外資系と比べると国際的なネットワークが少なく、弱みと言われることもあるが、我々はむしろ強みだと思っている。旅先では、その都市にしかないユニークなホテルに泊まりたいというニーズが少なくないからだ」と話す。

 そこで、客室のデザインは外国人デザイナーを起用してモダンにしつつも、部屋に南部鉄器の急須や和菓子を用意するなど、日本ならではの雰囲気を演出。1階のロビーラウンジには和服で接客するスタッフもいる。一方で「以前は控えめなサービスを心掛けていたが、欧米のゲストは会話などを楽しむことから、積極的に話しかけたり、提案したりするようにしている」(渡部氏)。建て替え後は、外資系ホテルからの転職者の採用にも積極的だ。

 訪日客に特に好評なのが、62室あるクラブルーム。クラブラウンジの専任スタッフによる密度の高いサービスが受けられる。ADRは9万~10万円とさらに高いにもかかわらず、リピート率が高いという。

建て替えプロジェクトから携わり、変革の先頭に立ってきた渡部勝総支配人
建て替えプロジェクトから携わり、変革の先頭に立ってきた渡部勝総支配人