2020年の東京五輪に向け、ホテルの開業ラッシュが続いている。果たして需要は伸び続けるのか、どのようなホテルが生き残るのかを探る特集の第1回は、新ブランドのホテルが続々と開業する銀座にスポットを当てる。注目は、シティーホテルにも引けを取らない客室を備え、欧米からの訪日客を狙う宿泊特化型ホテルだ。

2019年8月にオープンした「ザ ブラッサム 日比谷」は、宿泊特化型ホテルながら、シティーホテル並みの上質感が売り(写真提供/JR九州ホテルズ)
2019年8月にオープンした「ザ ブラッサム 日比谷」は、宿泊特化型ホテルながら、シティーホテル並みの上質感が売り(写真提供/JR九州ホテルズ)

 「ミュッセ」「からくさ」「ブラッサム」……。ここ2年ほどで、聞いたことがない名称のホテルが次々と銀座に誕生している。2018~20年までの新規オープンホテルは、実に12施設(下のリスト参照)。そのほとんどが、国内の大手企業が手掛ける新ブランドか、海外からの初上陸ブランドだ。米ハイアットのライフスタイルホテル「ハイアット セントリック」や、無印良品の世界観を具現化した「MUJI HOTEL」など、個性的な施設も目立つ。

(地図作成/オゾングラフィックス)
(地図作成/オゾングラフィックス)

 なぜ、銀座でホテルの開業ラッシュが起きているのか。世界的な総合不動産サービス会社・ジョーンズ ラング ラサール日本法人で執行役員ホテルズ&ホスピタリティ事業部長を務める沢柳知彦氏は、「訪日外国人客にとって、銀座は新宿と並んで知名度が高く、インターネットでのホテル検索で選ばれやすい。日本人が米ニューヨークのホテルを探す際に『タイムズスクエア』『セントラルパーク』などと検索キーワードを入れるのと同じ」と話す。

 訪日客の数はうなぎ登りで、18年は3119万人と、10年前の約4倍に達している。20年に4000万人、30年には6000万人という野心的な政府目標も、絵空事とは言えない。20年の東京五輪開催による需要が一過性になるという指摘もあるが、「12年のロンドン五輪では反動減は見られなかった」(沢柳氏)。ここへきて訪日客の半数以上を占めていた韓国人、中国人などの伸び悩みが見られているものの、人口減で大きな伸びが望み薄な国内のビジネス客、観光客よりは有望だ。さらに沢柳氏は、「19年のラグビーワールドカップ日本大会、20年の東京五輪を通じて欧州からの旅行需要を開拓できる可能性がある」と見る。欧州からの訪日客は、近隣諸国からと比べると長期間滞在し、所得水準もより高く、消費へのインパクトが大きいのが特徴だ。新たなホテルの顔ぶれを見ても、一昔前に乱立した画一的なビジネスホテルとは様相が大きく異なる。

訪日客数の伸び率(前年同月比)
訪日客数の伸び率(前年同月比)
アジアからの訪日客数が伸び悩むなか、欧米からの訪日客は堅調に増加している(出典/日本政府観光局)

 19年8月、銀座とはJRの線路を挟んで目と鼻の先にあるオフィスビルの高層階(18~27階)にオープンした「ザ ブラッサム 日比谷」(住所は港区新橋)。運営するのはJR九州グループのJR九州ホテルズ(福岡市)で、同社としては14年にオープンした「JR九州ホテル ブラッサム新宿」に次ぐ首都圏進出第2号だ。JR九州でホテル事業を統括する事業開発本部長の田中龍治専務は「首都圏にはスタンダードなビジネスホテルが多いが、出張客は伸びず、そのクラスはこの先苦しくなるだろう。我々はインバウンド需要を主眼に置き、シティーホテル並みの客室設備、サービスで勝負する」と話す。