2023年1月、講演のために来日した世界的マーケター、ジム・ステンゲル氏へのインタビュー。前編では、パーパス(企業の存在意義)の提唱者として知られる同氏にパーパスの重要性を聞いた。後編ではセールスフォース・ジャパンCMO(最高マーケティング責任者)の鈴木祥子氏を交え、パーパス実践のポイントやブランディングの本質などを聞く(聞き手は日経クロストレンド編集長 佐藤央明)。
――パーパスをつくっても「全員の自分事にする」のが最も難しいことのように思います。上から「パーパスを考えよ」「実践せよ」と指示を出されても、みんなの自分事になってなければいいアイデアも出て来ない。そこをうまくいかせる方法はありますか。
ジム・ステンゲル氏(以下、ステンゲル) おっしゃる通りで、そこがうまくいかなくてパーパスをうまく使えない会社は多いのですが、本当にシンプルなやり方があります。どの会社にもある業績評価のタイミングで、「会社のパーパスに対して自分で誇りに思える行動は何か」を問うのです。それに対して「分かりません」「何もしていません」と答える人もいれば、「そもそもパーパスが自分にどう関係しているのかよく分かりません」という人も出てくるでしょう。そこで初めて、パーパスをどう自分事として考えられるか、という話ができると思うのです。
最近カナダの不動産会社とパーパスに関わる仕事をしたときに、CEO(最高経営責任者)は不動産があまりにも一般的な事業であるために、パーパスを掲げる意味があるのかと最初は疑いを抱いていました。しかし一方で、パーパスを全社員に理解をさせ、全員が新たな行動を起こすことができれば、それが企業としての優位性につながるのではないかとも考えていたのです。そこで今話した方法を用いて、全ての従業員としっかり話をする機会を持ちました。その結果、法務部や財務部や物件のテナントを探す人たち、あらゆる部署の従業員が自分の言葉でパーパスを説明できるようになり、企業全体の競争力も高まったのです。
――日本では企業のパーパスは経営が決めるものという意識があって、マーケティング部門があまり関わっていないことがあります。しかし、日々顧客と向き合っているマーケティング部門だからこそできることがあるのではないでしょうか。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー